あえて属人化させる

池田大輝
·
公開:2026/1/15

会社に勤めたことのある人なら、属人化という言葉を一度くらいは聞いたことがあると思う。一般に、この言葉は良くない意味で使われる。業務が属人化、すなわちその人にしかできない状態にあることは、組織としては脆弱だ。その人が辞めてしまうと仕事が回らなくなるし、後任が来ても引き継ぎができない。だから、属人化を解消するために、マニュアルを書いたり、システムで自動化することが良しとされる。仕事は、誰でもできるほうが良い。コンビニやマクドナルドのアルバイトは、徹底的に属人化が排除されていると思う(働いたことがないので想像)。

一方で、たとえば、私は恋愛ゲームをつくっている。自分でシナリオやイラストを書いて(描いて)いる。同じシナリオを書いてくれる人は、世界に二人といないだろう。私の書くシナリオは私にしか書けない。紛れもない属人化である。

創作や芸能においては、属人化がむしろ強みになる。アイドルは、その人でなければ意味がない。同じ歌やダンスをほかのアイドルが歌って(踊って)みても、その価値は全く違うものになる。価値というか、なにもかも違う。その人だから意味がある。ここが、一般的な仕事と異なるところだ。

誰にでもできる仕事は、AIやロボットが奪っていくだろう。AIはすでに順調に仕事を奪いつつある。ChatGPTが世に出て、3年ちょっとしか経っていない。量産型の人型ロボットも、10年後には安く買えるようになるはずだ。

マニュアル化された仕事ほどつまらないものはない。AIにできることは、AIにやらせておけば良い。つまり、残るのは属人化した仕事だけ。という未来を見越して、せっせと属人化を進めている。あらゆる仕事や成果物を、池田大輝という名前に紐付けておく。このエッセィだってそうだ。匿名で書かないのは、それが理由。池田大輝にしかできないことが増えるほど、池田大輝の仕事も増える。ここが重要なポイントで、私はできるだけ仕事をしたくない。だから、私の代わりに、池田大輝に仕事をしてもらう、という発想である。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink