あなたは普通の人だと思いますか?と訊かれて、ちょっと考えてしまった。普通ってなんだろう? 普通でありたい人は多い。普通に暮らして、普通に働いて、普通に恋愛して、普通に家庭を持つ。そのような人生を望む人の多くは、実際に普通の人である。普通が嫌だという人もいる。あえて普通じゃないことをやって、普通じゃないという「印」を得る。ただし、そのような人は結果的に似たり寄ったりになりがちだ。中年男性デザイナーは、帽子とメガネとヒゲに収束するという噂を聞いたことがある。
人は誰もが特別だ。どれだけ普通の人であっても、他の誰とも違うわけで、その意味では特別といえる。一般に、特別であることは生きていくうえで足枷になる。就活では個性をアピールするよりも、いかに普通であるかをアピールするかが鍵になる。仕事でルールが定められているのは、みんなが普通に仕事をこなせるようにするためであり、普通じゃない人は扱いづらい。歯車という比喩は的確で、一個だけ特別な歯車があっても全体の邪魔になるだけだ。普通の人とは、その人じゃなくても構わない人、と言い換えることができる。
つまり、普通じゃない人とは、その人じゃなきゃダメな人である。他の誰でもなく、あなたでなくては意味がないような、そんな人のことである。どれだけ普通じゃない人であっても、火星にひとりぼっちでは、その特別さは意味をなさない。普通かどうかは自分では決めることができない。あなたは普通じゃないよね、と誰かが言ってくれることで、あなたは普通じゃなくなる。もっとも、その時点で、普通さも、普通じゃなさも、同じくらい無意味になるけれど。