短い文章を書くのは難しい

池田大輝
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公開:2025/10/25

ここのところものすごく忙しい。だから、このエッセィも当面は短縮することにした。のだけれど、いざやってみると、短くまとめるのはとても難しいことがわかった。短くスマートにまとめるためにはスキルが要る。加えて、時間をかけてはいけないというプレッシャーを(自分から)受けているせいで、余計に手元が落ち着かない。まあ、ある種の極限状態におけるトレーニングと思えばお得なのかもしれないけれど、なんというか、疲れる。どうにも、自分を追い込みがちな性格らしい。だって、毎日書く必要なんてどこにもない。そう決めたからやっているに過ぎない。とはいえ、ほとんどのことは、そもそもやる必要などない。仕事も別にやらなくて良い。実家でぬくぬく暮らすことだって全然できる。なのにそれをやらないのは、ある意味で贅沢な生き方だ。やる必要のないことをわざわざやっている。そうして、自分で自分を苦しめている。しかし、考えてみると、楽なことばかりやっていて、果たして楽しいのか、と思う。楽とは、たとえばタクシーの後部座席に座っている状態のことであり、それが一生続くことが、幸せなのかは疑わしい。どちらかといえば、慣れない車の運転席で、ぶっ飛ばすほうが楽しそうだ。いっときたりとも気を抜けない。常に死と隣り合わせ。まさに、いま、そんな人生を送っている。とても楽しい。文章を書くことに限れば、どれだけアクセルを踏み込んでも、あるいは、ハンドルをぐるぐる回転させても、死ぬことはない。まるであさっての方向に辿り着いたとしても、まあ、それはそれで良いだろう。短い文章を書くことは、喩えるなら、高速道路を時速200キロで走ることであり、とてもじゃないけれど、そこまでの勇気とドライビングテクニックを私は持ち合わせていない。この文章は、時速120キロくらいで書いた。いまの私にはそれが限界。少しずつ、アクセルを踏み込んでみることにしよう。やがて、音速を超え、第一宇宙速度を超えて、この宇宙を自由に駆け回ってみたい。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink