養いたい欲

池田大輝
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公開:2025/12/12

他人を養ったりお世話をするなんて、とても自分にはできない。と、数ヶ月くらい前までは思っていたのだけれど、最近、なんとなく心持ちが変わってきた。それまでは、むしろ養って欲しいと思っていた。端的にお金がなかったのである。それが、就職して、比較的お給料の良い仕事に就いた結果、心身ともに余裕が生まれた。その結果、養われたいよりかは養いたい、という気持ちが強くなってきた。

たぶん、元々、そっちのほうが向いている人間なのだと思う。5人きょうだいの長子であるし、誰かに従ったり媚を売ったりすることが極端に苦手。年長者にはだいたい煙たがれる。養われることに向いていないのだ。

というか、実は、養いたい欲はもっと前から現れていた。数年前に、初めてゲームのシナリオをゼロから書いた。国語も作文も苦手、本も読まない人間だったのに、書いてみたら、書けた。それは、才能があったからではなく、キャラクターを養いたいと思ったからだ。ペンを置けば、彼女たちの物語は終わる。作者として、それは嫌だった。みんなの物語を最後まで見届けたかった。だから、意地だけでやり切った。

最近までは、とてもじゃないけれど他人を養う余裕はなかった。とにかく限界だった。そんな私が、多少の余裕を取り戻した結果、養いたい欲をも取り戻しつつある。大切な人を養うためなら、少しくらい面倒な仕事でも喜んでできる。そう思えるようになった。

今日は、養うべき人を養うための計画を立てていた。計画を立てるだなんて、一昔前の私では考えられなかったことだ。それなのに、今は計画を立てることがとても楽しい。将来を想像することが楽しい。来るべき未来のために、いま、なにをすべきかを考えることが楽しい。1年前の私が見たら、同じ人間だとは思わないだろう。人は結構あっさり変わる。変わってしまった、というべきかな。さて、やることは山積みだ。計画どおり、進めよう。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink