ビジネス相方

池田大輝
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公開:2025/11/12

コンビ仲が悪いお笑い芸人は結構いるらしい。養成所で意気投合したものの、馬が合わず、解散を繰り返すケースは珍しくないとか。あるいは、コンビとしては好調だけれど、プライベートではほとんど交流しないという人もいる。

芸事を仕事と見做すなら、このようにドライな関係は、むしろ普通のことだ。一般的な会社であれば、上司や同僚と毎日のように飲み歩く、なんてことは、今時はまずないだろう。仕事に関係のないことを強要すれば、コンプライアンス上の問題になる。

同じことは芸人にもいえる。テレビに出ている芸人が明るく社交的に見えるのは、そのように振る舞うことが仕事だからであって、テレビ的な演出に過ぎない。芸や稽古をしていない間は業務時間外であり、相方と仲良く振る舞う必要はない。基本的に、相方はビジネスパートナーである。

そして、ビジネスパートナーには、良いビジネスパートナーもいれば悪いビジネスパートナーもいる。相性というやつだ。誰もがどんな人とでも一緒に働けるわけではない。個々人のスペックや、業務内容よりも、どんな人と一緒に働くかが重要だという意見もある。きっと、体感したことのある人も多いだろう。多少、気乗りしない仕事であっても、この人となら、と思えたことがあるはず(もしかしたら、逆のほうが多いかもしれない)。

あくまで主観だけれど、面白いお笑いコンビは、互いが良きビジネスパートナーであることが多いように思う。ただの仲良しグループでもなく、嫌々付き合う中でもなく。ちょいど良いバランス、という表現ではもったいない。運命的な巡り合わせ、と呼ぶべきだろう。

お笑い芸人から学ぶことは本当に多い。お客さんを感動させることよりも、怖がらせることよりも、笑わせることがいちばん難しい。仕事だけれど、仕事としてやっていると、観客にそれがバレてしまう。友達のノリではそもそも笑わせることができない。理想のビジネスパートナーという存在を、お笑いコンビほど明確に示してくれる職業はない。理想のビジネスパートナーに、果たして出会えるのだろうか。わからない。わからないけれど、なんとなく出会える気がする。あるいは、すでに出会っているから、そう思えるのだろうか。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink