いまや安定している職業を探すほうが難しいのではないか? 安定している職業とは、時代がどれだけ変わろうとも需要があまり変わらない産業である。農業、物流、医療あたりは、当面は無くならないだろう。ロボットが本格的に普及すれば、状況はおそらく変わる。人間にしかできないと思われていた仕事は、どんどんAIに奪われている。雇用へのインパクトという意味では、AIよりもロボットのほうが影響が大きい。AIは知能労働を奪い、ロボットは肉体労働を奪う。食いっぱぐれない仕事とは、往々にして後者を指してきた。
普通に会社に勤めるなら、働く期間は40年か、定年が多少伸びたとしても、せいぜい50年だろう。つまり、安定している職業とは、50年続く仕事のことだ。50年後がどうなるかなんて、誰もわからないし、誰も保証できない。そんな当たり前のことが、社会にいるとわからなくなる。みんな、いまこの瞬間しか見ようとしない。目の前の未来だけを見て、この仕事は安定しているだとか、あの仕事は不安定だからやめろだとか、そんな話ばかりしている。人生は長く、そして短い。長い目で見れば、人間は誰しも生まれて死ぬという、きわめて安定した軌跡を辿る。短い目で見れば、誰もが明日を憂い、来たる月曜日に怯えている。それがデフォルトなのだ。私たちの肉体と精神は、死ぬまで不安定であり続ける。その事実を直視できない人たちが、安定という幻想に縋る。そうやって死んだみたいに生きて、生きたいと願いながら死ぬ。死んだように生きることは、たぶん死ぬことよりもつらいと思う。いくら攻撃を受けても死ねない不死身のキャラクターの苦しみを想像したことがあるだろうか。