私はみなし公務員なので、取引先の民間業者と懇意な関係を持つことは基本的にはアウトである。取引先の接待を受けてしまうと、いわゆる贈収賄に該当する。機構内の人間同士であれば贈収賄のリスクはないけれど、たとえば上司と部下のように非対称な力関係がある場合には、パワハラのリスクが生じうる。そのように考えると、職場で懇意な関係を築くことは、基本的にはリスクを伴うといえる。
そう思うと、職場恋愛はすごい。本当に存在するのかさえ疑わしいけれど、まあ、なくはないのだろう。恋愛とコンプライアンスは対極の関係にある。ふつう、仕事では役割を演じることが求められる。銀行の窓口にいる間、その人は銀行の窓口の人である。今朝なにを食べたとか、休日はどんな予定があるかとか、そういうことを持ち込んではいけない。恋愛は、その最たるものだ。上司と部下の間に恋愛感情が生まれれば、決裁フローが破綻する。業務が回らなくなり、組織が崩壊してしまう。そうならないように、プライベートを仕事に持ち込んではいけないことになっている。
同時に、私たちは結婚して子供を産み育てなければならないことにもなっている(らしい)。考えてみれば、あまりにも理不尽である。使える時間の半分以上を仕事に捧げなければならないのに、職場で恋愛をしてはいけない。あまりにも馬鹿馬鹿しいから、現代の賢い若者は、結婚相談所やマッチングアプリで効率的にパートナーを探すのだろう。
恋愛とコンプライアンス。どちらが不自然なのかといえば、明らかにコンプライアンスである。そもそも、仕事とプライベートは対立する概念ではない。区別したほうがトラブルが起きずに済むから、そのようになっているに過ぎない。もちろん、贈収賄のように、禁止すべきものはあるにせよ、それは「赤信号を無視してはいけない」というのとなんら変わらない。仕事であれプライベートであれ、赤信号は無視してはいけない。それだけのことである。
仕事とプライベートの区別が私にはない。私はただ生きているのであって、やりたいことがあるから仕事をしてお金を稼ぎ、そのお金でやりたいことをやっている。やりたいことの中には、仕事っぽいものもあれば、プライベートっぽいものもある。それらを区別する意味がよくわからない。恋愛は、仕事なのか、プライベートなのか? 恋愛ゲームをつくっているという意味では、恋愛も仕事のうち、といえなくもない。