10年以上、一人暮らし

池田大輝
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公開:2025/9/1

大学に通うために秋田から上京してきたのが18歳の頃。それからずっと一人暮らしを続けている。正確に言えば、最初の1年は、民間が運営する学生寮みたいなところに住んでいた。とある会社に勤めていたときも、そこの寮に住んでいた。これがとんでもないボロ寮で、たしか築70年くらいだったと思う。部屋に水道はなく、水回りは共用。部屋のドアも壁も薄くて、たいへんなストレスだった。

寮にいた期間を除いて、ちょうど10年くらい一人暮らしをしている。我ながら、よくやっているなと思う。生活力はどちらかといえばないほうで、自炊が三日坊主になったことは数え切れないほどある。料理自体はそこまで嫌いではないのだけれど、料理を継続するための食材の管理だとか時間の捻出だとか、そっちのほうが苦手なのだ。自分一人のために張り切って料理をする気にもならない。結婚すれば、もう少し料理をするようになるかもしれない(し、ならないかもしれない)。

とはいえ、家事が苦手なりに工夫はしている。数年前に初めてルンバを買った。正確には購入ではなく月額のサブスクである。月1000円くらいでルンバを使うことができる。ルンバにはたいへん助けられている。床の空間さえ確保しておけば、自動で掃除してくれる。自分で掃除するよりも断然綺麗になる。床に物が散らかっていると、まずはそれを片付けなければならず、これが少々めんどくさい。床に物を置かない生活設計が望まれる。

あとは、スマートホーム。簡単に言えば、外出先からでもスマホで自宅の家電を操作できるデバイスである。我が家にあるのは、Google NestとSwitchBot。これがあると、エアコンや電気をつけたまま外出することができる。外出や帰宅のタイミングでこれらを自動でオンオフにすることもできる。ルンバもスマホから起動できる。あまりにも便利で、これがない生活には戻れない。

この10年で、暮らしぶりはかなり変わった。お金は昔よりも使わなくなった。学生の頃は飲み会やら外食やらに恐ろしい金額を使っていた。あの頃はお金のありがたみがわからなかった。働いてみて、そのありがたみがよくわかった。欲しいものはだいたい買った。いま、欲しいものは特にない。つくりたいものは山ほどあり、そのために頑張ってお金を稼ごうとしている。ルンバやスマートホームを導入したのは、創作に割く時間を少しでも捻出するためだ。お金で時間を買っている。まあ、半分くらいは趣味みたいなものだけれど。

なんか、よく生きているなと思う。いつ死んでもおかしくない人生を送ってきた。というのは大袈裟かもしれないけれど、少なくとも、順風満帆な人生ではなかった。きっと、伝記映画になったら面白いと思う。私がそこそこ売れたら、誰かに撮ってほしい。監督と脚本と主演は私が指名しよう。具体的な候補のイメージはない。きっと、これから出会うのだろう。

もしこれが映画なら、これまでの人生は冒頭の10分に収まる。プロローグ、あるいは前フリというやつである。面白いのはこれからだ。ぱっとしない人生に転機が訪れ、調子に乗っていると、どん底に落とされ、そこから再起の物語が始まる。できればどん底には落ちたくないけれど、まあ、私が脚本家ならそうすると思う。そういう鬱展開を入れない人に脚本をお願いしようかな。伝記映画の脚本ではなく、この人生の脚本を。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink