恥ずかしいことを言うのが仕事

池田大輝
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公開:2025/5/4

ここ「しずかなインターネット」に毎日書いているエッセィは、それなりに赤裸々である。できれば言いたくないこと、書きたくないこともある。結婚のこととか、昔の恋人の話とか。それでもなぜ書くのかといえば、それが宣伝であり、仕事だからだ。

私は恋愛ゲームをつくっている。改めて言っておくと、恋愛ゲームをつくっていることと、作者である私の恋愛は特に関係がない。かつての恋人をヒロインのモデルにするようなことはない。知り合いの名前をキャラクターの名前に使わせてもらうことはあるけれど、それは恋人に限った話ではない。私と関わったことのある人は、誰もが名前をキャラクター名に使われる危険に晒されている。そのまま使ったりしないので、安心してください。

だから、まあ、恋愛ゲームをつくっているからといって、恋愛話をあえて書く必要はない。それでも、あえて書くのは、一種のブランディングである。私の恋愛や結婚観を赤裸々に語ることで、作品のほうにも興味を持ってもらおうという目論見だ。喩えるなら、アイドルの自撮り写真に近い。無料で興味を惹きつけて、ライブやグッズに誘導する。仕組みとしては同じである。

つまり、これは宣伝であり、営業だ。恋愛ゲームを買ってください。池田大輝のファンになってください。ということを、できるだけオブラートに包んで言う。包まずに言ってしまったけれど、こういうお茶目なところもセールスポイントである。「である」調の文体とか、あとは日頃、創作やAIに関して小難しいことを言っているから、とっつきにくさを感じている人もいるだろう。それは別に良い。けれど、こうして時折見せるお茶目な一面や、乙女な恋愛観にドキッとしてもらえたらありがたい。

恥ずかしいことを言うのは簡単じゃない。お笑いをやってみてよくわかった。一番だめなのは、恥ずかしがること。恥ずかしがって、もじもじしていてはお客さんを笑わせることができない。お芝居も同じ。どんなに恥ずかしいセリフでも、堂々と言わなければならない。恥ずかしがるから余計に恥ずかしい。恥ずかしい役こそ、恥ずかしがらずに演じ切るのだ。

ということを、芸人や役者さんから学びつつある。それを私もやってみよう、と思って、こうして日々エッセィを書いている。でも、まだまだ、全然だ。もっと恥ずかしいことを言わなければならない。恥ずかしければ恥ずかしいほど良い。そういう境地に辿り着きたい。でも、本当に恥ずかしい姿は、誰にでも見せるわけじゃない。というか、見せられない。そういうのは、電気を消してからじゃないと。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。エッセィを毎日更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink