あなたにしか見つけられない色がある

池田大輝
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一般的な画面に表示される色の数は16,777,216通り。これは日本の人口よりも少ないから、一人に一色を割り当てようとすると、色が足りなくなってしまう。しかし、色の階調(ビット数)を増やすと、色の総数は劇的に増える。さっきのはRGBがそれぞれ8ビットだったが、これを16ビットに増やすと、色の総数は約281兆色にものぼる。地球上の人間に異なる色を割り当てても、全然余る。

現実世界は、もっと多様な色でできている。RGB値が同じだったとしても、反射の具合や光の当たり方で見える色は変わる。まわりの物体の色によっても見え方は変わる。世界の色は、人間が知覚できるよりも遥かに複雑だと想像できる。

色には名前がついているものがある。りんごは赤、バナナは黄色、空は青、夕空は……なんだろう?

人はそれぞれ違う。それは、たとえば、16ビットの色みたいに。りんごのように真っ赤な人もいれば、バナナのように鮮やかな黄色の人もいる。でも、それは確率的には極めて少ない。色の割り当てがランダムだとすれば、ほとんどはパッとしないグレーのような色になる。きっと、名前はついていない。似たような色がたくさんある。でも、そのどれもが違う。281兆も色があれば、同じ色になることはまずありえない。現実にはもっとたくさんの色があるから、なおさらだ。

名前のついていない色が世界にはたくさんある。それはまるで、ごく一部の才能だけが見出されて脚光を浴びているかのように。でも、目立つ色には理由がある。RGBの値が偏っているとか、あるいは全部が大きいとか小さいとか。ヴィヴィッドな色は目立つ。そして少ない。ヴィヴィッドでないたくさんの色がある。そのどれかひとつを選んで名前をつけることができる。どれを選ぶか、そしてどんな名前をつけるかは、プロデューサーであるあなたの手腕にかかっている。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink