中二病というものに、少なくとも中学生の頃は罹患していなかった。世界のすべてを悟ることも、超人的な能力を手に入れることもなかった。キツすぎるバスケ部の練習をやり過ごすことで精一杯だったし、それ以前に、精神がたぶん、まだ小学3年生くらいだった。あの頃は、中二病に罹患している同級生がかっこよく見えていた。自分の知らない世界を、その人たちは知っている。羨ましいとか、もっと知りたいとか、そういう気持ちを抱くことすら知らず、ただ純粋にすごいと思っていた。
大人になり、最近になってようやく、精神年齢が中学2年生くらいになってきた。そして、精神が中学2年生になると、わかることがある。あ、あの人も、中学2年生なのだな、と。それは、たとえば、美術部の女子中学生のような。美術部の同級生はいたけれど、彼女たちがどんな絵を描いていたかを知らない。絵を見た記憶もない。そう、彼女たちは、世界の秘密を知りながら、それを隠し続けていたのだ。いまは、その気持ちがよくわかる。世界の秘密はあまりにも巨大で、茫漠としていて、一枚のキャンバスには到底収まらない。それでも、それが使命だと知ってしまった以上、描かなければならないのだ。
だから、書き続けているんでしょう? そう言い残して、不敵に笑い、モノクロの空にウィンクをした。