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北太平洋より愛を込めて

池田大輝
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公開:2026/7/11

このエッセィがXに投稿される頃、私は北太平洋の上空にいる。今これを書いているのは、新宿にある自宅である。新宿も、北太平洋も、なんとなく非現実的な場所に思える。新宿に住むなんて考えたこともなかったし、学会でアメリカに行くことは想像すらしなかった。今の職場に就職したのは、ちょうど1年(と1日)前。当時はとにかく限界で、仕事が見つかればなんでもいいと思っていた。ただし、普通のアルバイトは時給が安すぎるから、専門性が活かせて少しでもマシなバイトを探していた。ゲーム会社やエンタメ系の企業は全部落ちた。書類すら通らなかった。あ、いや、違う。ひとつだけ、アニメ映画の背景の仕事をいただいたことがある。門脇康平監督の『我々は宇宙人』という作品に、背景美術として参加させていただいた。1年半前のことである。自分のゲームでイラストを描いてきたとはいえ、本格的なアニメ、それも映画に関わることになるなんて、やはり想像したことはなかった。いざやってみて、自分の実力のなさを痛感した。監督にご迷惑もおかけした。とにかく、途方もない世界なのだと思った。結局、その後、今の職場に就職することになったため、担当したのは全体のごく一部だけだった。クレジットには名前を載せていただいているようである。映画のクレジットに名前が載るのはこれが初めて。なんだか、初めてのことばかりだ。この数年で、本当にいろんな経験をした。思いもよらない方向に、人生という船は進んでいる。飛行機の中にいるのに、比喩は船なのか。だって、飛行機は、思いもよらない方向には進まないだろう。不測の事態に見舞われて、どこかに不時着するにしても、滑走路を目掛けて精確に着陸することができる。船は違う。波に、風に、揺られている。中学生の頃、進路調査で「漁師になりたい」と書いて、親に驚かれたことがある。なぜあれを書いたのか自分でもよくわからなかったけれど、きっと海というものに憧れがあったのだろう。海はどこまでも果てしない。その体積は、宇宙の大きさに比べればほとんどゼロに等しいはずなのに。そういうところが、ロマンティックだと思うのである。

@radish2951
恋愛ゲームをつくっています。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink