ファルコムにいた頃、よく言われていた言葉。インタビュー記事にも書いてあった気がするから、企業秘密ではない。はず。
「できないことはやらない」だなんて、保守的でつまらない、もっとチャレンジすべきだ、と当時の私は思っていた。けれど、時間が経って、必ずしもネガティブな言葉ではないと思うようになった。
まず、できないことはできない。トートロジーだ。できないのだからやりようがない。これは正しい。
じゃあ、できないことを、研究や練習などの努力を重ねてできるようにすべきか、という話になる。これは、一概には言えない。努力さえすればなんでもできるようになるわけではない。できるようになった結果得られる成果に見合う努力か、つまりリターンに対してどこまでリスクを取るべきかを考える必要がある。
重要なのは「できること」だ。自分はなにができるのか。見極めるのは結構難しい。できると思っていたことが案外できなかったりするし、その逆もまた然り。やってみなければなにができるのかはわからない。つまり「できないことはやらない」を遵守するためには、まずはやってみる必要がある、というパラドックスが潜んでいる。
「できないことはやらない」の対偶をとると「やったことはできる」となる。やはり当たり前だけれど、こっちのほうが前向きなニュアンスがある。できるかどうかはやってみるまでわからないし、やってみて、できたらラッキー、くらいに思っておくのがよさそうだ。
ところで、自分の「できること」を認識するのは簡単ではないけれど、他人の「できること」は意外と見えやすかったりする。この人はこれが得意だろう、と見抜くことは、こんな私にも唯一「できること」なのかもしれない。