私は人に会うのがあまり好きじゃない。一人でいるほうが楽だし、孤独がつらいとも思わない。人と会うとエネルギーを消費する。気を遣うし、いろいろと面倒なことも多い。それでも、会いたい人には積極的に会いにいくべきだと思っている。
会いたいと思う人なんて、人生で数えるほどしかいない。試しに数えてみてほしい。私も数えるから、ほら、ちゃんと数えて。えーと……１分くらい考えて、3人の名前が浮かんだ。そのうち一人はお会いしたことのある方である。この御三方をドンピシャで当てた方には粗品をプレゼントしたい。絶対に当たらないと思うけれど。
きっと、誰だってそんなものだと思う。本当に会いたいと思う人なんて、数えるほどもいないのだ。そのような人たちは、人生において、きわめて重要な存在になる。なぜ会いたいのか、わからないかもしれない。ならば、考えてみよう。なぜ、余計な交通費を払って、貴重な時間を消費してまで、その人に会いに行きたいのか。SNSで気軽にメッセージを送れる時代に、なぜ、直接、言葉を伝えたいのか。
呆れるくらいに不合理だ。人と会うための合理的な理由なんてほとんどない。会社にわざわざ出社するのは、仕事を円滑に進めたいと企む経営者の合理的な判断である。大切な人に会うために、満員電車に乗っているのではない。
本当に大事な人に会うときは、満員電車なんかに乗らない。その人のためだけに予定を空けて、ずっと前からそわそわして、案の定、あまり眠れなくて、眠い目を擦りながらおしゃれをして、余裕を持って家を出て、乗り慣れない、がらがらの電車に乗る。
明日、とある人に会いにいく。さっき浮かべた御三方のお一人である。本当に会えるのか、正直まだよくわからない。会えなかったとしても、それはそれでいいかなと思っている。そこまで会いたいと思っていないのかもしれない。わからない。でも、ドキドキしていることは事実だ。本当にドキドキできる機会なんて、人生で数えるほどしかない。私たちはドキドキするために生きているのかもしれない。