結婚相手に求める条件 パート2

池田大輝
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公開:2025/5/27

結婚の話はなぜか読まれやすい。全く理解できないが、仕事として書いている以上、需要があるなら書かねばなるまい。ということでパート2である。

前回、結婚相手に求める条件として、生理的に最低限不快じゃないことと、「ピンとくる」ことを挙げた。もちろん、一方的にではなく、お互いに。生理的なボーダーラインはなんとなくわかると思うけれど、ピンとくる、というのは、些かざっくりしすぎていたかもしれない。今回はここを掘り下げてみたいと思う。

とはいえ、「ピンとくる」感覚を説明するのは難しい。正直、これ以上説明のしようがない。そもそも、このように書いてしまうと、過去に付き合っていた人たちに対して「あなたにはピンときませんでした」というメッセージを発することになる。申し訳ない。でも、お互いにピンときていたら結婚していたはずだから、別れたということは、やはりピンとこなかったのだろう。ただ、強いて言えば一人だけ、ピンときたといえる人がいた。

高校時代に付き合った彼女のことが、あの頃は本当に好きだった。本当に、本当に好きだった。好きすぎて、情けない姿もたくさん晒した。もうほとんど忘れたし、覚えていることもここには書きたくない。一つだけ書こうか。仲が険悪になり、別れそうなムードが漂い始めたころ、私は「結婚したいくらい好き」と彼女にメールした。軽くあしらわれたのを覚えている。本当に、情けない思い出だ。

高校を卒業して以来、彼女とは一度も会っていない。もし、もう一度会うことがあったとしても、付き合うことはない。今はもう、好きじゃない。では、なぜ彼女にはピンときたのか。それはきっと、タイミングだと思う。

彼女とは、高校2年生の修学旅行をきっかけに距離が縮まった。ホテルの部屋でちょっとしたハプニングがあり、以降、お互いを意識するようになった。きっと、修学旅行がなければ付き合うこともなかっただろう。同じクラスだったこと、修学旅行があったこと、ホテルで彼女の部屋に遊びに行く口実があったこと。これらはすべてコントロールできない偶然だった。いくつかの偶然がたまたま重なり、私は彼女に恋したのだ。

「ピンとくる」とは、すなわち「偶然が味方してくれる」と言い換えることができる。マッチングアプリでの出会いは必然だ。条件の中からできるだけ合う人とマッチする。そういう出会いは求めていないから、マッチングアプリはやっていない。そうではなく、もっと、偶然に、運命に身を委ねるような出会いが好ましい。高校のクラスが同じ、というのは、紛れもない、純然たる偶然だった。

だから、あえて条件として書くとすれば「偶然の出会いに導かれた」といったところか。もちろん、偶然と必然は明確には区別できない。ただ、この人との出会いは偶然だったな、と思える人は何人かいる。いくつもの偶然がたまたま重なって、運命の女神に導かれるように出会った人。その人もまた、同じように思っているのだとしたら、結婚相手に相応しい、のかもしれない。


ちなみに。「偶然」という言葉が相変わらずざっくりしていることは承知している。もう少し具体的な例を挙げたほうがわかりやすい、とは思うのだけれど、具体的に書いてしまうと、さもそれが条件のように見えてしまう。だから書くわけにはいかない。

それにしても「たまたま同じクラス」レベルの偶然は、大人の世界のどこに転がっているのか。居酒屋? バー? あいにく、お酒は弱い。というか、そのような場で声をかける勇気はない。ナンパは論外。街中での偶然の出会いも、今やハラスメントと紙一重だ。と、考えてみると、高校時代のような純然たる偶然の出会いは案外、限られているのかもしれない。ならばいっそ、本当にどうでもいい偶然に身を任せてみようか。たとえば、名字が同じとか。早く夫婦別姓が選べるようになればいいのにとは思うけれど、そもそも同じなら困ることはないだろう。池田さんと結婚したいと言っているのではありません。念のため。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。エッセィを毎日更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink