文章を読むとき、脳内で「声」が再生される。読むときだけでなく、書くときも。この文章も誰かが「読み上げている」。その声は一体、誰の声か?
少なくとも、自分の声ではない。女声か男声か。どちらかといえば男声。ただ、割とニュートラルでさらりとした印象がある。かといって、機械的な無機質さがあるわけでもない。饒舌で自信に満ちた声でもない。
キャラクターのセリフであれば、キャラクターを演じる声優の声で再生される。「やっほー! あたしは五月山さつき! どこにでもいるごく普通の高校1年生!」は、五月山さつきを演じてくださった宮白桃子さんの声で再生される。が、「五月山さつきを演じてくださった宮白桃子さんの声で再生される」の部分は、やはり正体不明の声が読み上げている。
本当に、誰の声なのだろうか。思い当たる声が見つからない。きっと、現実に存在する人の声ではないと思う。でも、たしかに声がする。
心の声なのか?
心とは、ほとんど意味不明なものだ。自分の心も、他人の心も、よくわからない。よくわからないけれど、喋ることはできるのか。
そうかもね。
と、ちょっとだけ冗談めかした声がした。