全員、お姫様。

池田大輝
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公開:2025/3/14

恋愛ゲームをつくっていると、「キャラクターの中で一番好きなのは誰か?」と訊かれることがある。答えは「全員」である。

そもそも、自分の好みでゲームをつくっているわけではない。私がピンクや赤髪のキャラが好きなことと、『さくらいろプリズム』のヒロインの一人、柏木葵の髪色が赤っぽいピンクであることには関係がない。たまたまそうなっただけであり、実際、外見や性格はキャラクターによって様々だ。

作者が特定のキャラクターを贔屓しないことは、恋愛ゲームのゲームデザインとしても理にかなっている。キャラクターの人気ができるだけ分散するほうがマーケティング的にも好都合だろうし、プレイヤーも誰を選ぶか悩ましくなる。もちろん、あえて偏らせることも全然ありだと思うけれど、私は人気を分散させることにかなり心血を注いでいる。

キャラクターから見て、誰か一人が贔屓されていたら、あまりいい気持ちはしないだろう。贔屓されたキャラも、なんとなく気まずいと思う。だから、最初から全員をお姫様扱いするのだ。全員にできるだけ等しく「可愛いね」と言うし、できるだけ等しくちやほやする。みんな可愛いので、仕方がない。

誰だって、生まれながらにしてお姫様なのだ。小さい頃はそうやって可愛がられていたはず。別に、大人になっても変わらない。生まれてから死ぬまで、お姫様扱いされる権利がある。当たり前のことだと思うけれど、案外理解されないのかも。

全員、お姫様扱いする。それは作者に与えられた権利であり、義務である。フィクションの存在だからこそ、思う存分ちやほやできるともいえる。実在する人に同じことをしたらセクハラになりかねない。フィクションのキャラならセクハラではないのか?と思ったあなたは鋭い。正直、微妙なところだ。嫌だと言われたら辞めるべきだろう。でも、今はとりあえず問題なさそうなので、引き続きお姫様扱いしていく。なお、言うまでもないことだけれど、キャラクターの性別は関係ない。そうでしょう、姫?

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink