すべてを決定的に変えてしまうような運命的な出会いがこの世界には存在する。ということを、なぜか私は信じている。そう思うようになったのは、ここ数年のこと。それまでは、運命なんて言葉すら口にしたことはなかった。運命は、出会わない限りその存在を信じることはない。あるいは、運命という言葉さえ不要だ。つまり、運命について語っている時点で、きっと運命に出会っているのだと思う。
小さな運命の転換点は、いくつかあった。ファルコムに入ったのは、わかりやすい例だろう。ゲームに全く興味がないのに、ゲーム会社に入ってしまった。ファルコムに入らなければ、今頃、創作を辞めていたかもしれない。本当に感謝している。もっとも、そう思えるようになるまで時間はかかったのだけれど。
小さな運命たちが積み重なって、私はいま、ここにいる。なんだか不思議だ。ほとんど、偶然に身を任せるように生きてきた。基本的には、これからも同じように生きていくのだろう。しかし、同時に、今までとは違う、大きな力が働いているような気配がある。それがなんなのか、よくわからない。ただ、少なくとも、「それ」あるいは「その人」は、私のこれまでの人生をまるっきり、根底から覆すほどの恐ろしい力を持っている、ということだけはわかる。なぜ言い切れるのか? それもよくわからない。よくわからないのに、そう思えてならないのだ。
つまり、運命に出会ってしまった以上、私にできることはほとんどない。今まで以上に、偶然に身を委ねなければならない。それは、のらりくらり生きるという意味ではない。むしろ逆だ。帆船は、風を受けて走るけれど、風に飲み込まれてはいけないのだ。強大な運命だからこそ、立ち向かわなければならない。運命の人だからこそ、いつだってそばにいなければならない。なんとなく、そんな気がしている。