デートに費やした時間でなにができたか

池田大輝
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公開:2025/12/22

何年か前まで恋人がいた。お互い社会人になったタイミングで付き合い始めて、結局、4年近く付き合って別れた。婚約もしたけれど、結婚には至らなかった。

デートには、たくさん行ったと思う。基本的には毎週末、会っていた気がする。旅行にも行った。同棲こそしなかったけれど、彼女と物理的に一緒にいた時間は、トータルでみれば、それなりに長かったはずだ。

付き合って3年目くらいから、私は恋愛ゲームをつくり始めた。友人と二人で、最初は趣味程度のつもりだったはずが、だんだんと熱が入ってしまい、結局、勤めていた会社を辞めた。これが、別れる理由の少なくない割合を占めた。会社を辞めてからの1年間は、ひらすらにゲーム制作だけをしていた。

今も、基本的には当時と同じような生活をしている。自由時間のほとんどを創作に充てている。一応、就職をしているので、起きている間はずっと、とはいかないけれど、それでも、できるだけ時間を捻出して、作品づくりを前に進めようとしている。やりたいことは無数にあり、時間を無駄にしている場合ではないのだ。

なんてことを、当時の彼女に言ったら、きっと悲しむことだろう。申し訳ない、と思うと同時に、仕方なかったのだ、とも思う。時間は残酷なまでに有限だ。時間をどのように使うかは、人生で最も重要な選択といっても過言ではない。私は、創作に充てている。それをやりたいし、それが大切だからだ。

それは、恋人は大切ではない、ということを意味しない。大切なものは人生にいくつあっても構わない。けれど、大切なものが増えるほど、優先順位の決め方も増える。優先順位の決め方が増えるほど、この問題は難しくなる。大切なものが5個あれば、その並べ方は120通りある。

デートに費やした時間を、すべて創作に充てていたら、今頃もっと売れていただろうか。たぶん、それは違うだろう。私たちはデートをしていたのであって、時間を無駄にしていたのではない。時間は有限であると同時に、誰にも等しく与えられる。その配分が、人それぞれ違うだけ。恋愛ゲームをつくるのに、恋愛経験が必須、とは全く思わないけれど、どんな経験も糧にできるのが、作家という職業の良いところである。少なくとも、私の尊敬するクリエイターは皆、紆余曲折という言葉には収まらないほどの紆余曲折を経ている。彼らに比べれば、私なんて、キスもしたことがない中学生みたいなものである。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink