岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』を劇場で観てきた。岩井俊二監督のファンだけれど、これを観るのは初めてである。最初に観た岩井作品は『リリィ・シュシュのすべて』で、当時私は大学生だった。とにかく、心に深いダメージを受けた。それから岩井俊二監督のファンになった。
さて、映画の感想を書こうとしてみているのだけれど、全然言葉が出てこない。岩井俊二はあまりにもすごい。どんな言葉さえ陳腐に聞こえてしまう。言葉というものが、『スワロウテイル』では重要な要素になっている。中国語、英語、日本語およびそれらが入り混じった不思議な言語が作中では頻繁に交わされる。字幕がないと、半分も聞き取れないと思う。実際に作中の登場人物も、言葉が聞き取れないシーンがいくつかあった。
新海誠監督が憧れだとすれば、岩井俊二監督は師匠である。もちろん、直接師事したわけではない。私淑というやつである。一応、岩井監督には直接お会いしたことがある。大学生の頃、岩井監督が主宰となって映画について語り合うNHKの番組があって、それに聴講生のような形で参加させていただいた。『リリィ・シュシュのすべて』を観たのはそのためである。撮った映画を直接講評していただく機会もあった。そのときにいただいたアドバイスを今も心に留めている。せっかくの機会だし、その内容をここでシェアしよう。
ある男がスマホで友人の写真を撮ると、友人がスマホの中に閉じ込められてしまい、男はスマホの中の友人を指で弄ぶ……というストーリーである。異変に気づいて、初めてスマホを触るときに、もっと慎重に、不審がって、恐る恐る触るほうが良いんじゃないか、というのが岩井監督のアドバイスだった。当時はその意味がよくわからなかった。今ならわかる。けれど、それ以降、ちょっと慎重になりすぎているのかもしれない、と、『スワロウテイル』を観て思った。岩井俊二監督は、恐ろしいくらいに大胆な人だ。大胆なことをするためには、まずは慎重にならざるを得ないのだろう。つまり岩井監督は、大胆になれと仰っていたのだ。それが今日、ようやくわかった。