アマチュアだから面白いものができる

池田大輝
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公開:2026/2/4

私が勤めていた日本ファルコムというゲーム会社の創設者である加藤正幸会長が、2024年に亡くなられた。加藤会長のお別れの会で、同じくファルコム社員だった新海誠監督は、弔辞で会長のお言葉を引用されたそうだ。『なあ、俺たちはアマチュアだから面白いものができるんだぜ』と。

ファルコムは、言われてみれば、たしかにゲーム会社らしくない会社だった。たとえば、適当にゲーム会社の求人を探してみると、だいたい職種ごとに求められるスキルや経験が細かく記載されている。現代の巨大化したゲーム開発においては、役割が細分化している。ファルコムは真逆だ。スキルも経験も学歴も不問。とにかく、いろんなことをやらされる。ファルコムを出ても、ほかのゲーム会社では、あまり役には立たないだろう。私がその一例である。

専門性というものが育たないのだ。ファルコムは、なにかを究める場所ではない。面白いゲームをつくるためにはどうすれば良いか、常にゼロから考えなければならない。専門性や経験は、面白さを生む局面においてはマイナスに作用することすらある。そういうことを、加藤会長は、新海監督は、仰っていたのだと思う。

私は在籍中、加藤会長とお話しすることはほとんどなかった。ファルコムがどのような会社であるのかを、辞めてから少しずつ知っていった。ファルコムを辞めたあと、たいへんつまらない会社に転職してしまった。自動車関連のメーカーでシステムエンジニアの仕事に就いた。そこでどんな仕事をしていたのか、もうほとんど忘れた。ファルコムに入社したときに加藤会長から言われた『辞めないでよ』のひと言は今でも覚えているというのに。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink