生きるのを手伝ってほしい

池田大輝
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公開:2025/3/10

生きることは昔から下手だった。友達やクラスの輪になじめず、社会性が自分にはないと小学生くらいの頃には薄々感じていた。その予感は正しく、大人になってからもとにかく社会というフレームワークに適合することができず、あちこちにぶつかりながら、痣だらけでここまで生きてきた。

みんな、本当に生きるのが上手いと思う。日々、仕事をし、生活をする。つらいことはあると思う。それでも、出世したり、家族を養ったり、趣味を充実させたり、傍から見れば、トータルでは良い人生を送っていると思う。

その点では私も同じ。長い目で見れば、良い人生を送っている。昔から続けている創作は、映画から恋愛ゲームへと形を変えながら、着実に成長している。これからもつくりたいものは山のようにあるし、つくればつくるほど、勝手に成長していくと思う。未来は明るい。

問題は、足元だ。あちこちにぶつけまくって痣だらけになった脚は、いよいよ出血している。釘や木片がたくさん刺さっている。タフなほうではあるから、多少の痛みは我慢できる。けれど、このままでは血がどくどくと流れて、骨も折れてしまうかもしれない。そうなると、そもそも歩けない。

痛みを無視して歩いてきた結果、それなりのところには来ていると思う。充分ではないにせよ、決して悪くない。このまま、コンスタントに歩いていけば、数年後にはかなりいいところまで行けるはずだ。

コンスタントに歩いていく、という一点だけが、本当に、難しい。歩くのがあまりにも下手なのだ。できるだけ、うまく歩く工夫をしているつもりだけれど、それでも限界がある。下手なことを受け入れて、歩いていくしかない。

歩いていった先の景色を見通すことができるのは、私の数少ない特技だと思っている。遠い先の未来ほどよく見えるのだ。だから、そこへ向かって一歩ずつ、歩いている。逆に、足元ほどよく見えない。痣だらけになるまで、この痛みに気づけなかったくらいには。

だから、肩を貸してほしい。手を取ってほしい。歩くのを、生きるのを、手伝ってほしい。もう少し行けば、開けた場所に出る。そこで一緒に休もう。お弁当を食べよう。その先は霧がかかっていてよく見えない。でも、さらにその先には青空が見える。そこまで一緒に、歩いて行こう。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink