マッチングアプリでは運命の相手に出会えない

池田大輝
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公開:2025/4/8

マッチングアプリは一度もやったことがないし、これからやる予定もない。アプリをインストールしたことも、会員登録したこともない。まわりにはマッチングアプリをやっている人がかなり多い。あえて否定するつもりはないけれど、少なくとも私はメリットを見出せない。

マッチングアプリは、プロフィールや好みのタイプをもとに、条件に合う相手とマッチングするのが基本的な仕組みだと思う。趣味や好みのタイプがお互いに合致すれば、付き合ったり結婚したあとも円満な関係が続くはずだ、という理屈だろう。大きくは間違っていないし、そのようにマッチした結果、良好な関係を築いている人を何人か知っている。

しかし、冷静に考えてみてほしい。まず、全ての人間がマッチングアプリをやっているわけではない。アプリはいろんな種類があるから、特定のアプリに限ればそのユーザー数はさらに減る。特定のマッチングアプリをやっている人は、多く見積もっても3割程度だろうか。つまり、マッチングアプリを使っている時点で、残りの7割との出会いを排除してしまうことになる。

次に、プロフィールでのマッチングについて。確かに、趣味や好みに基づいたマッチングには一定の合理性がある。が、これもさっきと同じく、趣味が合わない人とのマッチングを事前に除外してしまっている。趣味と相性には一定の相関関係があるとは思うけれど、それは、趣味がマッチングにおける最重要ファクタであることを意味しない。職業なども同じである。趣味や仕事は相手を知るためのとっかかりに過ぎないわけで、それ以外のたくさんの要素を取りこぼしてしまう。趣味や仕事以外になにがあるのか、と思った人は、おとなしくマッチングアプリをやることをおすすめする。

要するに、マッチングアプリという仕組みそのものが、かなりの数の潜在的な出会いを最初から切り捨てているのだ。もちろん、それでも母数は充分に多いから問題ない、という見方もあるだろう。転職におけるマッチングならその考え方でも構わない。適切な人材は一人だけではないからだ。けれど、パートナーはそうじゃない。条件に合う人の中からベストな人を選べば良いわけではない。その考え方をあえて否定はしないし、それで上手くいっている人もいるだろう。ただ、個人的に、その考えには賛同できない。

遊びで付き合う相手ならともかく、結婚相手は世界に一人だけだ。候補の中でベストだったから結婚するのではなく、最初から、その人が運命の相手なのだ。結婚したいから結婚するのではなく、運命の相手と出会ってしまったから結婚する。違うだろうか?

どんな人と結婚するかは神のみが知っている。運命とは、出会った瞬間にすぐにわかるものだ。最初はパッとしなかったとか、あとから魅力に気づいたとか、そういうことは些末だ。趣味とか仕事とか魅力とか相性とか、そういうものの遥か手前に運命はある。あまりにも近くてよく見えない。だから、もっとわかりやすいファクタに縋りたくなる。

運命を信じることは、運命の相手を信じることに等しい。マッチングアプリをやらないことは、同じようにマッチングアプリをやらず、運命の相手を待ち続けている悲劇のヒロインを迎えに行くことに等しい。ロマンチックすぎる? まさか、ご冗談を。本当の運命とは、このエッセィがつまらない法律の条文に見えるくらい、どこまでも果てしなくロマンチックなのでございます、姫。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink