そう言うと、彼女はトトロみたいに笑った。彼女の大きな口と、笑ったときに頬にできる小さな皺が僕は好きだった。これが笑窪というやつだろうか。いや、笑窪はその名のとおり、笑ったときにできる窪みのことだ。皺は、少し違うと思う。夢オチでもいいだなんて、そんなことを言わないでほしいと思った。これが夢だということを、僕も彼女も知っている。知っていながら、彼女は夢オチでもいいと言った。この夢が醒めたら僕たちは二度と会うことができない。彼女はまだ笑っている。僕はただ悲しかった。でも、考えてみると、僕だってどうすることもできずにヘラヘラと笑っているではないか。彼女だって同じはずだ。彼女を責めてしまったことを後悔して、そして、目が覚めた。彼女の顔を覚えている。大きな口と、頬の皺と、くるくると自然に巻かれて、少し濡れた髪。長いまつげと、大人びた唇。凛々しくて、それでいて悲しげな瞳。明らかに僕よりも大人っぽかったけれど、きっと年下だと思う。彼女の名前は忘れた。忘れてよかったと思った。もしも名前を覚えていたら、名前以外を忘れていただろう。笑顔も、声も、あとから気づいた恋心も。
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