バイトを辞めるとき人は輝く

池田大輝
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公開:2025/2/6

バイトをやりたくてバイトをする人はいない。社会経験としてバイトをやってみたい、と思うことはあるかもしれないが、最初のバイトでその目的は達成される。バイトはできればやりたくないものであり、そんなことはバイトをする人はみんな、わかっている。学生ならまだしも、大人になってからバイトをするのは大変だ。バイト以外にやりたいこと、やらなきゃいけないことがあるのに、バイトをしなければ生きていけないからバイトをする。

バイトは、基本的には人生の先送りである。よほど時給の良いバイトでない限り、バイトに費やす時間と給料の収支はトータルで見ればマイナスになる。もちろん、バイトの内容がそのまま夢の実現につながる可能性もゼロではない。映画館のチケットのモギリからプロデューサーになった人の話を聞いたことがある。小説家の森博嗣先生はバイトとして小説を書き始めて、稼いだ大金で庭に鉄道を敷設した。そのようにうまくいくケースはゼロではないが、ほぼゼロだ。ほとんどのバイトは負のスパイラルである。なぜか? バイトが等しくプラスの利益をもたらすのであれば、みんな喜んでバイトをするはずであり、飲食業界が人手不足になるはずがないからだ。

夢を実現したいなら、いつかバイトを辞めなければならない。成功してからバイトを辞められれば良いが、先にバイトを辞めざるを得ない場合もあるだろう。バイトを辞める瞬間には、独特の緊張感がある。会社を辞めるのともまた違う。別に気楽に辞めればよいのに、なにかこう、人生について考えさせられるような気がする。学生時代はいろんなバイトをした。その数だけバイトを辞めた。バイト中の記憶よりも、辞める瞬間の思い出のほうが強く残っている。綺麗じゃない辞め方もした。迷惑もかけた。それでも、辞めなければならない理由があった。

バイトをしているのなら、いつまでに辞めるのかを真剣に考えてみると良い。なぜバイトをしているのかを思い出せば、いつかは辞めなければならないことはほとんど明らかだ。バイトの辞め方を考えることは、夢の叶え方を考えることに等しい。バイトを辞めよう。そして夢を叶えるのだ。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink