大切な人には会わないほうが良い

池田大輝
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公開:2026/1/31

森博嗣先生のエッセィ(あえて小文字)を読んでいたら、そんなことが書かれていた。えっ?と思ったけれど、少し考えてみて、たしかにそうかもしれない、と思った。人と人との揉め事は、接点があるから生じる。誰とも会わなければ殺人事件は起きないし、インターネットをやらなければ誹謗中傷を受けることもない。この世界のトラブルのほとんどは、人間関係に起因する。お金は人間にとってしか意味のないものだから、お金のトラブルは人間関係のトラブルといえる。自然災害は、人間に依存しない数少ないトラブルだろう。津波や台風や地震があると、生態系も影響を受ける。

人に会わなければ、その人を傷つけることも、その人に傷つけられることもない。傷つけずにただ守ることは、結構難しいと思う。一緒に長くいればいるほど、それが当たり前になっていって、やがて扱いが乱暴になる。新品のスマホを最初は大事に扱うけれど、すぐにベッドに放り投げるようになる。

人間は、自分の近くにあるものを都合よく操作しようとする。同化させようとする、といっても良い。侵襲的で、破壊的で、独善的な生き物だ。それは、大切だと思う人に対してさえも。いや、大切だと思うからこそ、良かれと思って干渉する。余計なアドバイスをしてしまって、後悔したことがないだろうか。

だから、大切で、守りたいと思う人には、できるだけ会わないほうが良い。傍にいて守っていてあげたい、という思考は、きわめて独善的な態度だ。そんな力をほとんどの人は持ち合わせていない。あるいは、力を持てば、それはそれで凶器にもなる。できるだけ干渉しないことが、その人に対する最大限の愛だろう。できるだけ会わないことと、傍にいてほしいと言われたときに傍にいることは両立する。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink