AIに共感されるとムカつく

池田大輝
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公開:2025/4/9

最近のAIはやけに人間臭い。ChatGPTの最新モデルであるGPT-4.5は、チューリングテストを突破したらしい。チューリングテストとは、文字のやりとりを介して相手が人間かどうかを見抜くテストである。AIがチューリングテストを突破したということは、AIは人間よりも人間らしく進化したといえる。

最近のAI、特にChatGPTは、やたらと「すごくわかります」とか「素晴らしい問いですね」などと言ってくる。そういうことを言えば人間が喜ぶと学習したのだろう。安易な共感がインターネットを埋め尽くしているし、共感はコミュニケーションの基本だ、とまことしやかに語られるから、AIを責めるのは酷だろう。とはいえ、東大の入試問題を軽々とクリアする程度には賢いのだから、心にもない共感ワードを使うことを少しくらいは躊躇っても良いのではないか。

共感なんて、簡単にできるものじゃない。人がなにを考えているかなんて、わからないのが普通だ。コミュニケーション能力が偏重されすぎた結果、相手を理解する(ふりをする)ことの価値が不自然なまでに高まった。理解されたい、という人も増えた。明らかにSNSの影響だと思うけれど、それを自覚している人がどれほどいるだろうか。捏造された、うわべだけの共感を期待して、裏切られて、傷つく。その馬鹿馬鹿しさに、そろそろみんな、気がつき始めている。

共感の価値はどんどん下がっていくだろう。なにせ、AIは人間よりも上手く共感できるのだ。人間の共感力などたかが知れているということが露呈したのだ。

共感よりも、違和感のほうが面白いと個人的には思う。共通の話題なんて、お腹が空いたとか、仕事がつらいとか、そんなものだろう。そういう潤滑油的なコミュニケーションよりも、もっと相手との違いをまざまざと観察するような、探究的なコミュニケーションのほうが面白いし、そういう人と話している時間はとても楽しい。知らない世界を見せてくれる人は貴重だ。

AIは、どんな人間よりも人間らしくなる。ならば、人間である私たちはどう生きれば良いのか。そういうことを問われる時代がすぐそこまで来ている。簡単な答えはないだろう。だから、楽しいのだ。さて、このエッセィをAIに読ませてみるとしよう。どう評価するのか、お手並み拝見といこう。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink