気に入られようとしてもうまくいかない

池田大輝
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公開:2026/2/8

学生の頃は映画監督を目指していた。コネが大事だということは聞いていたから、自分なりにいろんな場所に顔を出して、いろんな人に気に入られようとしていた。でも、全然うまくいかなかった。仕方がないから、映像に関われる仕事として、次点でゲーム業界を選んだ。ゲームに特に興味はなかった。はずなのに、それからいくつかのゲーム会社で仕事をして、今は自分でゲームをつくっている。ゲームそのものは今も特に好きではない。もちろん、嫌いでもない。これくらいの距離感が、実はちょうど良いのではないか、と、なんとなく思い始めている。

誰かに気に入られることは、とても難しいことだと思う。そもそも、誰かを気に入ることなんて滅多にない(少なくとも私は)。仮に映画業界に勤めていたとして、見ず知らずの若者がやってきたところで、その人がどれだけ才能の塊だとしても、追い返すと思う。

才能は関係ないんだな、と気づいたのは最近。才能があるということを、若い頃は勘違いしていた。才能があれば、努力すれば、誰かが認めてくれるはず。そう思っていた。でも、違う。才能も、努力も、自分のためのものだ。自分が叶えたい夢のために、才能があるなら才能を使えば良いし、努力すべきなら努力すれば良い。

誰かに気に入られることが夢ならどうすれば良いのか、と思われるかもしれない。その夢は、要するに、相手の思考を支配したいということだ。本当にそれをしたいのか、考え直すのが良いと思う。あるいは、単純にその人と仕事がしたいのであれば、切り分けて考えるべきだろう。

気に入るとか気に入らないとか、好きになるとか好きじゃないとか、そういうのは、運だ。コントロールしようのないことだ。気に入られるかどうかだけじゃなく、気に入るかどうかも制御できない。好きになろうとしても好きになれないこともあるし、好きになってはいけないのに好きになってしまうこともある。

これを読んでいるあなたは、私のことを多少は気に入ってくれているのだろうか? それとも、なんとなく気になったから読んでみただけ? 別に、どちらでも構わない。気に入られたくて書いているわけじゃない。そもそも、あなたが誰なのか、私は知らない。それくらいの距離感が、なんとなく落ち着く。

いまさら書くことじゃないかもしれないけれど、「気に入る」よりも「好きになる」のほうが私は好き。そっちのほうがシンプルだから。誰かを好きになることは、それだけで素敵なことだと思う。好きになるのに理由はいらない。好きな人のためならば、なんだってできるような気がする。それで充分ではないか。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink