5年前、私はとある日系大企業に勤めていた。エンタメとは真逆にある、誰もが名前くらいは聞いたことのある会社だ。そこでシステムエンジニアの仕事をしていた。エンジニアといっても総合職なので、典型的な会社員である。当時は付き合っていた彼女もいて、このまま安泰に暮らしていくと思っていた。
のだが、ある日、突然思い立ったように友人と二人で恋愛ゲームをつくり始めた。コロナ禍になって暇な時間が増えたこと、仕事がつまらなかったこと、冴えカノの映画に触発されたことなどが重なった結果の出来事である。それまで恋愛ゲームをつくりたいと思ったことは人生で一度もなかった。二人であれこれアイデアを出し、キャラクターや設定を決めていって、そして制作開始から約半年、2020年6月頃に『さくらいろプリズム』の制作を発表した。
それからもうすぐ5年が経とうとしている。この5年で、なにもかもが変わった。ゲーム制作に思いのほか熱が入り、プロの声優さんに思い切ってボイスをお願いし、そのせいでさらに熱が入り、このままでは完成しないと思って会社を辞め、彼女とも別れ、それからほとんど一人で黙々とイラストを描き、なんとかゲームをリリースして、たまたま商業ゲームのシナリオを書く機会をいただき、並行して『さくらいろプリズム』の続編をつくり始め、今までに書いたことのないようなボリュームのシナリオを書き、イラストを描き、OPアニメをつくり、フルボイスのためにクラウドファンディングを実施し、音楽を籾山さんにお願いし、新しく『C.V.』シリーズも立ち上げ、泣きそうになりながら制作を進め、なんとか2作をリリースしたのがつい数ヶ月前のことである。
こんなことになるなんて、予想すらしなかった。ただがむしゃらに、直感に従って生きてきた。その結果、こうなった。
今はC.V.シリーズの新作『C.V.2 鏡の中の朗読劇 Infinite Reading Stage』の制作を進めている。『さくらいろプリズム ディレクターズカット版(仮)』も2025年中にリリース予定だ。とにかく、つくりたいもの、つくらなければならないものはたくさんある。だから、つくるしかない。
自分の作品以外の仕事もしている。具体的には言えないけれど、この仕事をする日が来るなんて、やっぱり思いもしなかった。そのうちお知らせできると思う。楽しみにしていてください。
本当に、なにもかもが予想外だ。良いことも、悪いことも、ぜんぶ。いま見ている景色を5年前の自分に見せても、きっと信じてはくれないだろう。事実はギャルゲーよりも奇なり、と少し前に書いた。少し誇張のつもりで書いたのだけれど、あながち間違っていないのかもしれない。これからの5年はもっと予測不能に違いない。だから、ついてきてください。きっとあなたが思いもしない未来を見せてあげますから。