大学と大学院で奨学金を借りて、社会人になってから、もう10年近く奨学金を返済している。トータルの金額がそこまで大きくないから、あまり負担ではないのだけれど、とはいえ、これだけのものを背負うというのは、やはり、大変だ。大学生の頃は、お金を借りることがどれだけ由々しき事態かを理解していなかった。コンスタントに、ずっと働き続けられるという前提が、いかに非現実的で、楽観的かを思い知った。幸いにして、奨学金を滞納したことはなく、完済までもう1年を切った。
お金を借りるということを、今後の人生で二度とやらないと決めた。現金で買えるものしか買わない。やりたいことをやるためにお金が必要なら、先に稼いでからにする。絶対に、そっちのほうが良いと思う。自分も他人も縛りたくない。縛られたくない。お金は自由の一形態だ。多くの自由を得るために、少し我慢して働いてみる。そう思ってから、働くことが少しだけ楽になった。
私が勤めていた日本ファルコムというゲーム会社は、創業時からずっと無借金だという。小説家の森博嗣先生も「お金を減らす最も簡単な方法は借金をすることだ」と仰っている。自由に、楽しそうにしている人たちがそう言うのだから、そうなんだろう。この奨学金を、人生最後の借金にしたい。