私が東工大生だった頃は、東工大(東京科学大学)は合コンでモテない大学ランキング1位と言われていた。それが正しいかどうかは合コンに行ったことがないのでわからない。そして、おそらく正しくない。東工大生はモテる。特に、卒業してから数年後に。
東工大を卒業すると、ほとんどの人は大学院に進む。とりあえず修士は取るよね、という空気が漂っているから、よほど就職意欲がある人でない限り、半自動的に修士課程に進む。それなりに荒くれ者だった私も修士に進んだ。もちろん、大学院入試はあるから簡単に入れるわけではない。
大学院に入ると、ほとんどの人は修士で卒業する。よほど研究意欲がある人でない限り、修士で充分だよね、という理屈らしい。修士は学士よりも初任給が高い。それは就職が2年遅れた分の穴埋めの意味合いもあるだろうから、短期的には学部卒のほうが有利。しかし、修士卒のほうが長い目で有利なことを、優秀な東工大生はよく理解している。そう、修士卒の理系は、婚活市場においてたいへん優れた優良物件なのだ。
その理由は年収だけではない。東工大出身の男子は、女性に不慣れな人の割合が高い。これは6年間のフィールドワークで得られた観察である。つまり、東工大男子の「最初の女」になってしまえば、安定した収入と誠実な恋愛の両方をまとめてゲットできるというわけだ。私の知る限り、修士を卒業して数年後にあっさりと結婚する東工大生は少なくない。みんな、とても幸せそうである。結婚式に呼ばれたことは、なぜか今のところ一度も無いが。
ちなみに、私は修士卒ではない。最終学歴は学部卒。修士に進んだあと、映画制作に専念するために大学院を休学し、結局、中退した。就職してから何度も転職したし、今は恋愛ゲームをつくっている。全然、優良物件ではない。ハウルの動く城みたいなものだと思ってもらいたい。魔法で奇跡的に動いているが、いずれ崩壊する。あのラストシーンみたいなラストを迎えたい人には、おすすめできるかもしれない。