共感されたくない

池田大輝
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悩みごとを打ち明けたときに「わかる」と言われると、ちょっとだけ負けた気持ちになる。わかられたくない。いや、まあ、うれしいし、悩みに耳を傾けてくれること自体はありがたいと思う。ただ、なんというか、安易に共感されるようなことで悩んでいるという事実に、どこか悔しさを感じてしまう。

「悩んでいるのはあなただけじゃない」という言葉は、悔しさのレベルがもう一段階上がる。共感する人が、会話の相手だけじゃなくて、この世界にもっとたくさんいることが明らかになるからだ。

この悩みは、気持ちは、自分だけのものであってほしいと思う。わがまま? 独善的? わからない。誰かにわかってほしくて吐き出しているわけではない。むしろ、共感されたくない。この気持ちも、別にわかってほしいとは思わない。なぜ書くのかといえば、そういうエッセィだからだ。気持ちを吐き出しているのではない。では、ここに書かれていることは一体なんなのか。共感せず、考えてみてほしい。

共感されたくない。だから、安易に共感しないように、心がけている。共感しそうになったら、一度立ち止まってみる。大きくは共感できるけれど、よくよく聞いてみると、細かいところで微妙に食い違っていたりする。その「差分」にこそ面白さがある。どんなに同じに見える意見でも、完全に同じものはない。

人はそれぞれ、結構違う。共感というのは、相手との共通部分を探るコミュニケーションだ。その人の魅力というものは、むしろ共感できない部分にこそあると思うのだけれど、捻くれすぎだろうか? 共感は求めていません。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink