たまには好きな人の話を

池田大輝
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公開:2026/1/17

最初に、その人のことを私はあまり知らない。どうも、好きな人のことを、私は深く知りたいとは思わないらしい。むしろ、知りたくなくて、情報を遠ざけてしまう。それでも、時間が経つにつれて、その人について知っていることは増えていく。なんとなく、私と同じタイプな気がする。どういう意味で同じタイプと言っているのかは、あえて伏せることにしよう。同じタイプと思える人は少ない。そういう人に出会うと、うれしくなる。よくわからないところが好き。簡単には素顔を見せないところが好き。というか、素顔というものがなさそうである。つまり、その人を愛そうと思うなら、その人のあらゆる側面を愛さなければならない。それは、その人のすべてを知るということではない。すべてを知ることはできない。知るのではなく、愛するのだ。

さて、ここまで書いて筆(というか指)が止まった。知らないのに、なぜ好きになることができるのか。我ながら不思議である。たぶん、好きというか、もっと直感めいたものなんだと思う。その人のことを知りたくないと思うのは、最初の直感が間違っていたことを暴かれたくないからかもしれない。それは否定できない。けれど、臆病さだけではないと思う。というか、その人も大概、臆病に見える。なんて、その人がこれを見ていたら、怒りそうな気もするけれど。でも、自信満々で、これが私だ、と堂々と言い切れる人よりも、たくさんの顔を持っていて、そのどれもがその人であって、そのどれかだけではその人ではないような、そんなあなたが私は好きです。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink