作物をつくる。建物を建てる。荷物を届ける。こうした仕事が無くなってしまえば、誰も生活ができなくなる。社会の基盤を支えているという意味で、これらの仕事は(広義の)インフラとみなすことができる。
歌を歌う。役を演じる。音楽を奏でる。このような仕事は、反対に、無くなったところで直ちに影響を及ぼすわけではない。震災時、お笑い芸人は何もできなかったという。人の命を支えるだけの力はない。その意味において、芸能の仕事は役に立たない。
しかし、時代は変化している。少し前まで遊びだと思われていたものが、仕事になりつつある。ゲーム配信で生活している人は決して少なくない。そのゲームをつくる人も増えている。ひとつのゲームが、イラストレーター、音楽家、CGデザイナー、シナリオライター、プログラマ、声優など、多くの雇用を生み出している。遊びが仕事に、インフラになっている。
芸能の仕事は役に立たない。けれど、役に立たないものが仕事になっている。なんの役にも立たない、ただ刹那的な快楽、感動にお金を払う人が増えた。AIが発展すれば、その傾向はますます強まるだろう。役に立つものは、AIに任せておけば良い。役に立たない芸ほど誰かを救う。そのような未来はそう遠くない気がしている。