互いにプロデュースし合える関係

池田大輝
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公開:2025/2/24

池田大輝の創作活動を支えてくれるプロデューサー的な相方が欲しい、ということを1年ほど前から言っている。もしかすると「雑用を押し付けたい」と勘違いしている人がいるかもしれないけれど、そうではない。

私は主には恋愛ゲームをつくっていて、外部作品を含めるとこの3年で4タイトルほどを手掛けた。アイデアや構想はまだまだ山のようにあり、恋愛ゲーム以外にもどんどんつくっていく予定だ。また、このようなエッセィも2ヶ月ほど前から毎日書いている。ネタ切れの心配は今のところない。ゲームをつくり始める前は、ひたすら映画を撮っていた。とにかく、新しいものを創作せずにはいられない性格であり、それが自分にとって自然な状態であると認識している。

一方で、創作に直接関わらない部分には少なからず苦手意識がある。たとえば、宣伝。作品を完成させることに全力を注ぎすぎた結果、宣伝にまで手に回らないことがよくある。今がまさにそうだ。宣伝は大事だから、やるしかないのだけれど(このエッセィも宣伝活動の一環である)。あとは、資金調達。ほとんどのクリエイターが苦労するところだと思う。私も例に漏れず苦手であり、ほとんどの問題はお金に集約されると言っても過言ではない。

大きく括れば、私の苦手とする部分は「プロデューサー的な」領域である。プロデューサーという職務の指すところは業界によってまちまちだと思うけれど、大きくは違わないだろう。要するに、クリエイターの創作活動を「支える」役割である。わかりやすいのは宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーだろうか。新海誠監督を見出したのは、当時伊藤忠商事に勤めていた川口典孝さんだった。クリストファー・ノーラン監督は、妻でありプロデューサーでもあるエマ・トーマスとタッグを組んでいる。

クリストファー・ノーラン監督は、プロデューサーも兼任している。監督とプロデューサーは明確に職務が分かれているとは限らず、監督が資金調達やマネジメント、宣伝に奔走することも少なくない。だから、私もある程度はプロデューサー的な能力を身につける必要があるとは思っている。面倒ごとは全て他人に任せ、自分は好きなことだけをしていたいとは思っていない。それでも、事実として、活躍しているクリエイターの多くは、信頼できるプロデューサーを味方につけている。本当にすべてを一人で抱えている人を私は知らない。だから、これからもっと作品を世に送り出していくためにも、プロデューサー的な相方が必要なのだ。

と、このように書くと、やはり「誰か私を支えてくれ」と言っているように聞こえるかもしれない。それは正しい。けれど、一方的に支えて欲しいとはあまり思わない。「誰かを支えたい」気持ちは、それなりにある。

支えたいというか、「見出したい」と言ったほうが近いかもしれない。いや、見出すというのは少し語弊があるかな。噛み砕くと、「その人にしかできないことをお願いしたい」のだ。

それがなんなのかは、人に依る。イラストレーターであれば、その人にしか描けない絵を描いてほしい。役者であれば、その人にしかできない芝居をしてほしい。音楽家であれば、その人にしか奏でられない音を奏でてほしい。それは、必ずしも才能の話じゃない。才能の高低にはむしろ興味がない。わかりやすいのは役者だろう。実写の場合、役者の演じるキャラクターは、その役者と同じ見た目をしている。同じキャラクターを他の役者が演じると、同じ台本であっても同じ芝居にはならない。それくらい、「その人」との結びつきが強いのだ。イラストレーターにも音楽家にも、同じことがいえる。

そういうことに興味があると、最近、ぼんやりと思いつつある。たぶん、それなりにプロデューサー気質なのだ。学生の頃は映画監督を目指していて、ひたすらに映画を撮っていた。企画し、絵コンテを描き、キャストを集め、撮影し、編集し、完成させる。自分のやっていることは監督業だと思っていたけれど、案外そうでもないのかもしれない。ゲームをつくり始めてからは特に思う。いろんな人と作品をつくり上げることが楽しい。ワイワイするから楽しいのではない。その人にしかできないもの、その人だからこそできることを、作品にぶつけていただく。そうすることで、作品が唯一無二になっていくから楽しいのだ。

私の将来のプロデューサーには、その人にしかできないプロデュースをしてほしいと思う。それを事前に指定することはできない。こういうことをしてほしいという具体的なお願いはない。書きようがないのだ。単なる雑務であればいずれAIがやってくれるようになる。そういうことをお願いしたいのではない。ということを理解できる人は、プロデューサーの素質がある。

どんな人をも輝かせるプロデューサーはこの世に存在しない。クリエイターが多様であるように、プロデューサーも多様だ。私をプロデュースしてくださるような人は、たぶん、ちょっと変わった人だと思う。そうだ、この際だから言っておくけれど、プロデューサーとしての経験は一切求めていない。むしろ、ないほうがいいくらいだ。でも、安心してほしい。私のプロデューサーであるあなたを輝かせるのは、あなたのプロデューサーである私の役目だ。だから、よろしくね。未来のプロデューサーさん。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink