創作活動にかかるお金と生活費を賄うために、バイトをすることになった。政府系の医療研究機関でエンジニアみたいな仕事をする(らしい)。
以前、芸人はバイトしている場合じゃない、というエッセィを書いた。私は芸人ではないけれど、基本的にはどんな仕事にも同じことがいえると思っている。今は主に恋愛ゲームをつくっていて、それだけで生計が立てば理想だ。睡眠以外のすべての時間を創作に充てることができ、売上のサイクルがプラスに回るようになる。
ただ、今はそうなっていない。作品の売上だけでは生活できないし、次回作の予算も捻出できない。だから、仕方なくバイトを始めた。
似たような人は少なくないだろう。私のクリエイター仲間でも、本業である創作活動以外に別の仕事をしている人が多数派だ。ただし、たとえばフリーランスのCGデザイナーなんかの場合、最初から受託で仕事をすることがわかっている。つまり、オリジナルの作品をゼロからつくるのではなく、市場や顧客の需要に応える形で創作を行うのだ。アニメーター、デザイナー、作曲家など、クリエイター業の大半がこれにあたると思われる。
私の場合は少し違う。オリジナルの作品をつくっているから、市場というものが存在しない。顧客は、作品を買ってくれる人である。どちらかといえば芸人に近い。クライアントワークの側面はあれど、最近はYouTubeやTikTokを活用し、自分たちでゼロから企画を立てる芸人が少なくない。むしろ、そちらがメインストリームになりつつある。俳優やアイドルもこれに近い。要するに、顧客すなわちファンが最初から存在するか否かの違い、といえる。
だから、やっぱり、バイトなんかしている場合じゃない。ファンのために、作品をつくっていかなければならない。アイドルがバイトの話をしないのも頷ける。ファンをがっかりさせたくないのだろう。それでも、私がこうしてバイトの話を書いているのは、その仕事の多少の面白さのおかげである。肩書は一応、国の研究機関の研究職になる。シン・ゴジラにおける巨災対みたいな仕事だ。バイトなどと書いて怒られないか心配される読者がいらっしゃるかもしれないが、任期あり、非常勤だかられっきとしたバイトである。
どうせお金を稼ぐなら、少しでも話のネタになったほうが良い。誰にでもできるバイトに興味はない。というか、できる気がしない。誰にでもできることが私にはできない。だから、創作をしているし、創作を続けるために、できそうなバイトを探したのだ。やれやれ。とはいえ、このバイトをすることで、庵野秀明よりも霞ヶ関をリアルに描けるかもしれない、と思える程度にはポジティブで、芸人気質な人間です。