役者の道もあり得たのかもしれない

池田大輝
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公開:2025/5/9

小学生の頃、ポケモンのニャースのモノマネが得意だった。少なくとも、個人的な体感としては悪くなかった。今はもうできない。中学生の頃は、ターミネーター2ごっこを友達とよくやっていた。T-1000が溶鉱炉に落下するシーンの再現である。それから映画を撮るようになって、主には撮影する側だったのだけれど、出演することもそれなりにあった。というか、大学生までに撮った映画のうち、出演したもののほうが多いかもしれない。意外と、役者を経験してきている。

それでも、役者になりたいと思ったことは一度もなかった。ずっと自分は映画監督になるものだと思っていた。けれど、今思えば、それはやや視野狭窄だった。自分のやりたいことを実現する道は映画以外にもあると気づけたのはここ数年のことである。

恋愛ゲームをつくることは、そのひとつだった。恋愛ゲームをつくりたいと思ったことは一度もなかったのに、なぜかつくっている。だから、そういう「思いがけない可能性」がまだどこかに転がっているのかもしれない、と想像することは理に適っている。恋愛ゲームをつくり始めたのだって、たまたま『冴えカノ』を観たのが原因であり、そこにコロナ禍とか色々な条件が揃って生じた、ただの偶然に過ぎない。そういうことが、人生においては起こり得るのだなと、この数年で思い知った。

役者になりたいという気持ちは、今も特にあるわけではない。ただ、もしそういう道があるのだとしたら、面白そうだなとは思う。岩井俊二監督と庵野秀明監督は、お二人とも互いの作品にメインキャストとして出演している。岩井監督の『ラストレター』で庵野監督は、妻の不審なLINEに気づいてスマホを没収し、浴槽に投げつけて「スマホ禁止!」と激怒する夫を演じている。ああ、楽しそうだな。こういうのは、ぜひやってみたい。呼ばれたら駆けつけるので、呼んでください。ポートフォリオを添えておきます。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。エッセィを毎日更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink