業界関係者

池田大輝
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公開:2025/10/14

先日、東京ゲームショウに参加した。知り合いのゲーム会社の方にお願いしてチケットをいただき、インディゲームクリエイターとして、ビジネスデイで参加した。

と書くと、いかにもゲーム業界の人っぽいけれど、私自身はゲーム業界の人間だと思っていない。ファルコムにいたときでさえ、ゲーム開発にはほとんど関わらず、PVなどの映像ばかりつくっていた。

聞くところによると、東京ゲームショウのビジネスデイは、かなり間口を広げているらしい。少し高いチケットを買えば、誰でも参加できる。実際、平日だというのに、すごい混みようだった。明らかに業界関係者ではない人も結構いただろう。あるいは、ゲーム業界はそれだけ大きくなったのだと喜ぶべきかもしれない。いずれにせよ、ゲーム業界の人間かどうか、という区別は、だんだんと意味を失いつつあるように思える。

同じような曖昧化は、ほかの業界でも起きている。少し前に、医療系の職に就いた。そこで、研究者のようなことをしている。ゲームクリエイターが病院で働くなんて、一昔前は考えられなかったはずだ。センター長もそんなことを仰っていた。それくらい、時代が変わりつつあるのだろう。

私はいったい、なんの業界の人なのだろうか。なんて、普段は考えないのだけれど、こうしてたまに考えると、うーんと唸ってしまう。この業界に所属したい、という希望は特にない。好きなことができれば、別にどこでもいい。いや、好きなことができるなら、むしろ「それっぽくない」業界でやったほうが面白い。

ファルコムにいたときもそうだった。日本ファルコムは映像制作会社ではなくゲーム会社である。当時は映像の仕事に就きたかったけれど、映像系は全滅で、すんでのところでファルコムに拾われた。まさかゲーム会社で映像をつくることになるなんて思いもしなかった。このときの経験が、今の私を生かしている。

もう、そのように生きるしかないのだろう。私は一生「業界人」にはなれない。一生、「業界関係者」なのだ。そっちのほうが性に合っている。ありがたいことに、方々からお引き合いをいただくことも増えてきた。色々な世界を垣間見れることは楽しい。改めて思う、人生は冒険なのだと。偉大なる冒険家、アドル・クリスティンの薫陶を、私も知らぬ間に受けていたのかもしれない。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink