2024年の5月から3ヶ月間、サンミュージックが開催するお笑い養成所SEAに通っていた。吉本で言うところのNSCみたいなものであるが、SEAは授業料がかからない。無料である。週に一度、授業という名のネタ見せがあり、3ヶ月の最後の週に、事務所への所属を決めるライブがある。そこでマネージャーに気に入られれば、晴れてサンミュージックに所属となる。私はSEAの1期生である。もうすぐ6期生の授業が始まると思う。なお、NSCの1期生には、たとえばダウンタウンがいる。SEAにもぜひ頑張っていただきたい。
まさか、お笑い事務所に毎週通うことになろうとは思いもしなかった。お笑いの道に進みたいと思ったことはなかったし、もしSEAが有料だったら、入塾することはなかっただろう。芸能界というものについて知ってみたい気持ちが少しだけあり、興味本位で参加を決めた。
一方で、同じタイミングで入塾した同期たちは、みんなお笑いが好きだったし、本気で事務所所属を目指す人も少なくなかった。1期生はたしか35人くらいだった。そのうち、経験者、すなわち過去にほかの養成所を卒業していたり、フリーで活動している人が半分くらい。残りは私のような素人である。
結果的に、事務所に所属したのは3組ほどだった。通過率10%。なかなかに狭き門である。私は落ちた。一応、言い訳をさせてもらうと、私はコントをやりたかった。のだが、卒業ライブに参加した30組弱のうち、コントをやったのはわずか数組。コントをやりたい人が全然いなかったのだ。仕方なく、私はピンネタをやった。絶対に他所ではできないネタをやってしまったのも、落ちた原因のひとつかもしれない。あのネタを見れた同期は幸せ者である。
同期にはいろんな人がいた。ガチでお笑いを目指す人、お笑いが好きで来た人、なんとなく来てみた人。お笑いだけで生計を立てている人は(おそらく)おらず、みんな、ほかの仕事をしていた。バイトに明け暮れる人もいれば、良い会社で良い給料をもらっている(ように見える)人もいた。社長らしき人もいた。学生もいた。とにかく、いろんな人がいて、これだけ多種多様な人と交流できるだけでも、充分に元が取れたと思う。毎週のネタ見せ終わりに、ガストでわいわいと集まったりもした。いかにも芸人っぽくて、感無量であった。
ここ数年で、NSC何期生、みたいなものになんとなく憧れを感じるようになった。同期と呼べる存在は、今までの人生でほとんどいなかった。高校では映画部を友人と一緒に立ち上げた。まあ、同期といえば同期であるが、ややイメージと違う。大学では写真部に入り、たしかに同期はいたけれど、人数が少なかったこともあり、同期を意識することはなかった。会社も、よくわからないタイミングで入社することが多く、同期らしい同期はいない。
同期がほしいという気持ちが、もしかしたらSEAに入った最大の理由かもしれない。さっき、SEAは無料だから入ったと書いたが、もしNSC(吉本の養成所)が無料だったとしても入らなかったと思う。NSCはガチすぎる。そこでできた同期の繋がりは、私にとってはやや重い。別に、権威や資格がほしいわけじゃない。そんなものは無いほうが良い。無料お笑い塾という、どう見ても怪しいイベントにのこのこ集まり、意味不明なネタを毎週披露し、挙げ句サンミュージックに所属できずに落ち込む変な人たちの集まり。そんな人たちが同期で良かった。
ぜひとも、このままSEAが続いてほしい。そして、NSCみたいに大きくなって、お笑いの登竜門として立派な養成所になってほしい。規模が大きくなればなるほど、1期生のちゃちさが面白くなる。いつか伝説の1期生として呼ばれる日を、心待ちにしています。