宝石のように光り輝く、という言葉があるけれど、宝石は自分で勝手に発光するわけではない。光が宝石にぶつかり、表面で反射したり屈折したりして、輝いて見える。
新しい才能を見出すことを「原石を発掘する」と言うことがある。原石は発掘しただけではただの石だから、美しく磨き上げなければならない、という含みがあるけれど、それよりも大事なのは光を当てることだ。光が当たらなければ、存在しないのと同じである。
光を当てる、すなわち誰かを輝かせることは結構難しいと思う。写真をやったことがある人ならわかるかもしれない。被写体に適切なライトを当てることは簡単ではない。特に、宝石みたいに透明で繊細な美しさを持つオブジェクトには、緻密なライティングが不可欠である。ただやみくもに強い光を当てれば良い、ということではない。広告をたくさん打てば売れるとは限らないのに似ている。むしろ、ライトを当てすぎて、被写体の持つディテールを潰しかねない。
ライトを当ててくれる人がいてくれたらいいな、と漠然と思って生きてきた。こんなふうに言葉にしたのは初めてかもしれない。これからの人生は、誰かにライトを当てることが増えるかもしれない。なんとなく、そっちのほうが楽しそうだな、と思う。
ところで、宝石が光り輝くためには、宝石とライトだけでは足りないのだけれど、賢明な読者であるあなたなら、もうひとつ必要なものが何か、きっとお気付きでしょう。