負けると思ったなら負ける

池田大輝
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公開:2026/5/20

ここのところ、いろいろな企画やらコンテストやらオーディションやらの類に応募している。総じて結果は芳しくない。今日も東京ゲームショウの出展枠の落選通知が来た。ちょっとだけ落ち込んで、すぐに仕事に戻った。応募しているものはだいたい倍率が10倍かそれ以上で、落ちまくるのは確率的に自然である。

あまり落ち込まなかったのは、受かると思っていなかったからだ。もちろん、受かってほしいとは思っていたし、そのためにできることはやった。とはいえ、なんというか、正直、この募集を見かけたときに、まあ無理だろうなと思ったのだ。

東京ゲームショウに来るお客さんは、面白いゲームとの出会いを求めてはるばる幕張メッセへ足を運ぶ。特にインディゲームが目当てなら、できるだけいろんなゲームを試遊したいと思うだろう。となると、その場でサクッと遊べるようなゲームが好ましい。時間をかけて物語を読むだけのゲームは、あまり向いていない。

ということを、この募集を見かけた最初の1秒で私は思ってしまった。つまり、その時点で落ちることは確定していたのだ。ノベルゲームが本当に不利かどうかはわからない。ノベルゲームであっても審査員を唸らせてやろう、という気概が伝われば受かるかもしれない。要するに、落ちたのはこちら側の問題なのだ。

自分を信じろ、と言いたいのではない。自分を信じなければいけないくらいにそれ以外を信じられない状況では、自分を信じたところでほとんど意味がない。信じるべきは、直感だ。いや、直感は信じるものではない。強いて言えば、直感に委ねる、あるいは、直感を受け入れるべきなのだ。

人間の思考には二段階ある。外敵などに遭遇したときに咄嗟に逃げようとする反射的な思考と、じっくりと時間をかけて論理を組み立てるタイプの思考だ。これには二重過程理論という名前がついていて、前者がシステム1、後者がシステム2と呼ばれる。東京ゲームショウの募集要項を見て「落ちるだろうな」と思ったのがシステム1的思考で、「とはいえ種は蒔くべきだから応募しよう」と思ったのがシステム2的思考である。

システム1的な思考、言い換えれば直感を私たちは制御できない。そう思ってしまったことにそれ以上の理由はない。だから、あれこれ考えて、それらしい理屈を組み立てようとする。けれど、それは、直感という洗練された思考を、借り物の論理で上書きしているに過ぎない。

直感は、私たちの手の届かないところにある。直感が「負ける」と思ったなら、どれだけ努力してもたぶん負ける。直感が「勝てる」と思ったなら、どれだけ怠惰であってもたぶん勝てる。いや、勝ち負けさえもはやどうでもいい。勝ち負けよりももっと大事なことがある、と耳元で直感が囁いている。

@radish2951
恋愛ゲームをつくっています。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink