王子様は降ってくる

池田大輝
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公開:2026/6/3

先日、スタバでぼーっとしていたら、近くの女子大学生と思しきグループがそんなことを言っていた。降ってくる、というのが面白い。空から人が降ってくるなんて、ラピュタか『ワイルド・スピード SKY MISSION』くらいだろう(後者は車だけど。なお、続編の『ワイルド・スピード ICE BREAK』でも車が降ってくるシーンがある)。

冗談はさておき、王子様が降ってきてほしいと思う気持ちはわからなくもない。運命の人とは文字通り運命の人であって、どのように出会うかをコントロールできない。運命を表す最大級の表現として、降ってくるという比喩は気持ちが良い。その人が運命の人であればあるほど、その出会いもまた運命的なのだ。逆は成り立つだろうか? つまり、出会いが運命的であるならば、その人は運命の人である、といえるだろうか?

もしもそれが正しいのなら、空から降ってきた人は間違いなく運命の人である。車ごと降ってきたとしても、運命度はあまり変わらないだろう。このように考えてみると、運命の人というのは自ずと限られてくる。運命的な出会いなんて、数えるほどしかないはずだ。ゼロだとしてもおかしくはない。

車に乗った王子様が空から降ってくるほどの運命的な出会いが、これまでの人生であっただろうか。ゼロ、ではないかもしれない。その人は月から降ってきた。車ではなく飛空艇に乗っていた。その先はよく覚えていない。気がつけば、出会っていた。もしかしたら気を失ったあと月の裏側に拉致されて、記憶を書き換えられた際に「私が運命の相手だ」と閾下に刷り込まれたせいで、このエッセィを書いているのかもしれない。その人の名前を出さないのは、せめてもの抵抗である。

@radish2951
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