同棲というものをしたことがない。厳密に言えば、妹と1年くらい一緒に住んでいた時期があるけれど、家族と住むことを同棲とはあまり呼ばないだろう。
いま住んでいる部屋は、数年前まで付き合っていた恋人と半同棲できるように、少し広めの場所を選んだ。が、結局すぐに別れたため、一度も同棲していない。少しだけ広めの部屋に、しばらく一人で住んでいる。
もし誰かと結婚したら、きっと一緒に住むだろう。でも、同棲は正直、不安だ。
他人の気配というものが、そもそもあまり得意ではない。誰かが近くにいる状態が苦手なのだ。友達と食事に行くとか遊ぶとかは良い。人混みも嫌だけれど、一時的なら許容範囲。どちらかといえば、あまり親しくない他人がずっと近くにいることに耐えられない。
たとえば、職場。その人が好きか嫌いかはあまり関係ない。仕事の関係と割り切れる人であればあるほど、その人が1日8時間、私のそばにいることがしんどいと思ってしまう。かなり仲の良い友達でも、丸一日、一緒にいると結構疲れる。
特に、音。外にいるときは、いろんなノイズにかき消されるから、他人の発する音があまり気にならない。これが静かなオフィスだと、ちょっとしたため息とか、椅子の軋む音だとか、些細な音であればあるほど気になってしまう。
最たるものは、食事だ。静かな空間に微かに響く、咀嚼音や食器の音が、私には耐えられない。だから、オフィスで食事を摂ることはまずない。大きめの食堂があることは、職場選びの必須条件である。繰り返すけれど、普通に会食をすることは大丈夫。友達とご飯に行くのは好き。静かな場所で、他人の生理的なノイズに、日常的に曝されることがだめなのだ。
同棲は、まさにこれに当たる。しかも、これが一生続く。正直、耐えられるかどうかわからない。
私は音に敏感なんだと思う。昔から映像ばかり撮ってきたし、絵を描くのも好きだったから、視覚優位だと思ってきた。でも、視覚的な刺激よりも、音の刺激に弱いことが、最近になってわかってきた。仕事のストレスも相まって、職場で聞こえる些細な音がトラウマになったこともある。少しずつ慣れてきたけれど、やはり、他人が発する音は苦手だ。
ただし、すべての音がだめなわけではない。音に敏感ということは、心地よい音を人一倍、心地よく楽しめるということでもあるはずだ。散歩するとき、毎日のようにイヤホンで音楽を聴く。どんな曲を聴いているのかは、いずれ書くことにしよう。夜は、枕元でジャルジャルのコントを再生して眠る。睡眠用BGMというやつである。ジャルジャルのお二人の声が特別に好き、というわけでもないのだけれど、なにかこう、特別な安心感のようなものがある気がする。好きな芸人はほかにもいるけれど、ぐっすり眠れるのはジャルジャルだけ(褒めてます)。
そう考えると、同棲できる人、つまり結婚できる人は相当限られるだろう。私の生理的な反応は、私にはどうすることもできない。生理的に心地よいことが、結婚するための必要条件だ。しかも、互いにそれを満たさなければならない。そんな人、いるだろうか? あるいは、生理的に受け付けなくても、愛さえあれば大丈夫なのか? もしくは、私が結婚できる相手は、ジャルジャル後藤さんか福徳さんしかいないのだろうか? 残念ながら、お二人とも既婚である。なお、刺激に敏感な私であるが、刺激的なのは嫌いじゃない。後藤さんか福徳さんを奥様から略奪してしまえば、万事解決かもしれない(冗談です)。