マネージャーは舞台を整えるのが仕事

池田大輝
·
公開:2026/1/29

もともと、マネジメントというものが私はたいへん苦手だった。誰かにあれこれ指示を出したり、指示に従わせたりすることに忌避感を抱いていた。嫌がることを、無理にやらせたくはないだろう。それが仕事だというのなら、仕事というものは、まったく、ろくなものではないな、と思っていた。

最近になって、その認識が変わってきた。マネジメントとは、無理やり従わせることではない。少なくとも私は、そう思っている。マネージャー(上司)は、部下が歩きやすいように道の石を拾うことが仕事だ、というセリフを聞いたことがある。その意味が、ようやくわかってきた。

仕組みを整備したり、データを整えたりすることが、どうやら私は好きらしい。これも最近、自覚し始めたことだ。ある作業をやることになったら、すぐに着手するよりも、どうやったら効率的に進められるかをまずは考える。できるだけ余計な労力をかけずに達成することはできないか。あるいは、今、多少苦労したとしても、今後同じような作業があったときに、楽になるようにできないか。プログラムを書いて自動化するのはその一例。という発想のせいで、特に若い頃は、指示に従わない、使えない奴だと思われてきた。やれと言われたことをやらず、わけのわからないことばかりやっている。そう思われるのも無理はなかった。

他人にあれこれお願いをする立場になって、そのような特性がプラスに転じる場面が増えてきた。自分が手を動かすのではなく、他人に手を動かしてもらう。そのために、できるだけ手を動かしやすい環境をつくる。想定される障害をあらかじめ取り除き、情報を整理し、快適に作業できるようにする。そっちのほうが、遥かに自分に向いていると思う。歳をとるにつれて少しずつ、仕事というものが楽しくなってきた。

ここ2ヶ月ほど、新作ゲームのシナリオを書いている。初稿を1ヶ月で書いて、その後の1ヶ月でブラッシュアップを進めている。シナリオを書くことも、見方によってはマネジメントに似ていなくもない、と思う。私がやっているのは、キャラクターを動かすこと、ではない。キャラクターが生き生きと動けるように、舞台を整備しているのだ。展開やセリフがぎこちないと感じるとき、往々にして、キャラクターたちは無理をしている。思ってもいないことをシナリオライターに言わされている。これは、良くないマネジメントだ。優秀なマネージャーは、キャラクターの声に耳を傾け、一人一人の特性を把握し、それを思う存分発揮させるためにはどうすれば良いかを考える。感情や心理を把握することは基本的にはできない。舞台を整えるくらいしか、マネージャーにはできないのだ。

仕事をお願いした人が、予想外の成果を持ってきてくれるとうれしい。執筆中のキャラクターが、思いもしなかったセリフを言ってくれるとうれしい。だから、もっと努力しなきゃ。良きマネージャーにはまだ程遠い。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink