一度くらいはマッチングアプリをやってみても良いのかもしれない

池田大輝
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公開:2025/12/10

と、思って書き始めたものの、まあ、たぶん、やらないだろうな。マッチングアプリをやって、誰かとマッチングしたとして、会うのが気まずくないだろうか? マッチングアプリをやっている時点で、互いに少なからず交際の意欲がある、という事実を共有しているのだ。どんな顔で会えば良いかわからない。気まずさを楽しむエンタメだと思えなくもないだろうけれど、それは相手に失礼だろう。

明確な目的、悪い言い方をすれば下心をもって誰かに会う、ということが、基本的には苦手である。就職面接なんかもそう。あれは、要するに、お金をくださいというお願いを、いかにオブラートに包んでできるかの勝負である。仕事なんて、利害が一致するかどうかでしかないのだから、そういう駆け引きめいたドラマを演じるのはごめんだ。

その意味では、マッチングアプリは逆である。恋愛や結婚は、それ自体が本来は目的ではないはず。なのに、目的を達成するために、手続きが最初から整備されている。一番面白いところを、アプリに奪われてしまっている。

ここのところ、恋とか愛というものが、よくわからなくなってきた。恋愛ゲーム作家としては、よろしくない状況かもしれない。まあ、でも、研究者なんかも言うだろう。研究すればするほど、わからないことが増えていくと。マッチングアプリは、簡単な答えを差し出してくれる。でも、大事なのはその先だ。魅力的な恋人は、この宇宙の秘密と同じくらいミステリアスな存在である。壮大で、難解なミステリィほど解きがいがある。マッチングアプリで恋人を見つけることは、上質なミステリィをAIに解かせることと同じくらいもったいないと、私なんかは思ってしまう。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink