難しく考えすぎる癖を治したい、というタイトルにしようとして、やっぱりやめた。シンプルに考えることは簡単だ。世の中には絶対的な真実がひとつだけ存在して、すべてはそれで説明できる、と。陰謀論というやつである。物理学の天才が束になっても、この宇宙を統べる神の理論はまだ見つからない。シンプルに説明できるほど、世界はシンプルにはできていない。
難しく考えすぎなんだよ、という言葉は、一見、優しさに見える。でも、違う。思考を放棄しろという脅しに近い。考える前に行動しろ、も同じ。真面目に、じっくりと、時間をかけて考えることはダサいという謎の価値観が蔓延っているようだ。
考えることそれ自体はなにも生まない。考えたことを発表したり、行動に移したりしなければ、世界は変わらない。だからといって、考えることに意味がないと断じるのは論理が破綻している。考えることは、少なくともその人にとっては意味がある。どう意味があるのかは、考えてみなければわからない。考えれば意味がわかるとも限らない。
難しく考えすぎることは、考えることに等しい。シンプルに考えることは、思考放棄に等しい。その意味を、考えてみよう。