仮にフィアンセがいたとして

池田大輝
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公開:2026/2/17

とてもじゃないけれど、今は結婚している場合ではない。現に今日だって、寝不足のまま仕事に行き、帰ってから4時間仮眠を取り、起きて慌ててエッセィを書いている。まあ、さすがにイレギュラーだけれど、とはいえ、食事と睡眠以外のほとんどの時間を仕事に充てているのは事実である。基本的に人に会わないし、ゲームもしなければ料理もしない。

結婚すれば嫌でもライフスタイルが変わる可能性はあると思う。けれど、あいにく、それも難しい。いま、職場のごく近くで一人暮らしをしている。通勤時間がほぼゼロだ。いまの部屋に二人は住めない。引っ越して同棲を始めたとして、通勤時間が増えれば、そのぶん二人の時間も減る。ただでさえない余裕がさらになくなってしまう。

では、今の生活スタイルがいつか変わるのか、と(仮想のフィアンセに)問われたとして、答えるのは難しい。私としては、このように過酷な生活をずっと続けたいとは思わない。ゲームもしたいし料理もしたい。余裕は大事だと思っている。ただし、今は余裕はない。お金を稼がなければならないし、創作を前に進めなければならない。やることはいくらでもあり、そのためのあらゆる時間が惜しい。少なくとも、今後3年くらいは明確な計画を立てていて、暇になる見込みはない。むしろ、今よりも忙しくなる。

なんて言われて、うん、わかった、と首を縦に振ってくれる人が果たしているだろうか。その人も同じくらいシビアな生活を送っているなら、あるいは、お互いに理解しやすいかもしれない。毎食をきちんと料理して、夫婦団欒で食卓を囲み、休日はどこか遠くへデート、みたいな生活は、残念ながら見込めないだろう。そもそも、同棲できるかどうかすら怪しい。ものすごく暇になったとして、見ず知らずの他人と生活をともにできるかどうかは別の問題である。同棲というものをしたことがない。全くの他人が家族になる、ということが、私には想像がつかないのだ。

こうして書いてみると、恐ろしく結婚のハードルが高い人間であることがよくわかる。よほど溺愛されているのでもない限り、こんなのと結婚したいと思う人はいないだろう。誤解されないように書いておくと、結婚願望はそれなりにある。結婚して、穏やかに暮らしたいと思っている。ただし、そのためにも、今はせっせと働かなければならない。少なくとも、結婚することがお互いのメリットにならないと難しいだろう。結婚が互いの足を引っ張るようでは、うまくいくはずがない。この、結婚がお互いのメリットになる、というのがきわめて重要なポイントである。あらゆる打算を打ち砕くほどの純愛か、あるいは、あらゆる純愛を凌駕するほどのメリットかのいずれかが必要だ。どちらでも良いし、なんとなく、後者のほうが実現可能性が高い気がする。やれやれ、ロマンの欠片もない人間になってしまったものだ。あるいは、この窮屈なガラスの靴がぴったりな姫君に出会う日を待ち続けているという意味では、どうしようもないくらいにロマンチストなのかもしれない。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink