抽象的な話。
いくら似ていようと、同じような機能を提供しようと、他のものとは絶対に「交換できないもの」がある、と思っている。
私にとっては、新海誠監督がその一つ（一人）だ。最近では「ジェネリック新海誠」と呼ばれるような、いわば新海誠っぽい作風のアニメがあるらしい。当然ながら、それらは新海作品を置き換えるものではない（少なくとも私にとっては）。それに、仮に新海誠の上位互換のような才能が現れて、新海誠を完全に打ち負かしたとしても、私がかつて新海さんから浴びるような衝撃を受けた過去は変わらない、というか変えようがない。
クオリティや巧みさ、その他もろもろのパラメータがどのようであったとしても、他のものとは交換できない、そもそも交換が意味をなさない存在というものは、この世界に結構たくさんあるように見える。
結婚相手もその一例だろう。世界一美しいから、世界一金持ちだから結婚するわけじゃない。ある程度貯金があれば誰でもいい、というわけでもないと思う（たぶん）。そういう外から見えるパラメータではなく、もっとその人自身そのものであるような「何か」、すなわち「交換」という概念が適用できないコアのようなものに惹かれ、運命を感じたから結婚するのではないかと想像する。
この先の人生、少しずつでいいから、そういう「交換不可能なもの」を増やしていきたい。他の人から見れば些末でも、自分にとってはかけがえのない、唯一無二の存在。そして願わくば、私のつくるもの、あるいは私自身もまた、誰かにとっての「交換不可能なもの」になれたらうれしい。