コンテキスト圧縮と睡眠

池田大輝
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公開:2025/12/25

AIと対話したことがある人ならなんとなくわかると思うけれど、会話が長くなればなるほど、AIは馬鹿になる。これは、現在のAIの仕組み上、避けられないことらしい。なんだかなあ、と思う一方、考えてみると、人間にも似たところがある。休息を取らずにずっと仕事をしていると、だんだん頭がぼーっとしてくる。そんなときは、寝るのが良い。疲れが取れるし、頭もすっきりする。

実は、似たような仕組みがAIにもある。対話型AIは、会話の情報をコンテキストとして保持する。会話のログが、どんどんメモリに記憶されていく。このコンテキストが埋まっていくと、AIは馬鹿になってしまうし、そもそもコンテキストには上限がある。これを回避するために、コンテキストを圧縮する仕組みが一部のAIには備わっている。蓄積した情報を圧縮して、メモリを整理する。すると、まるで眠りから目覚めた人間のように、思考がクリアになる。

ここのところ、プログラムを書いたりするのにAIをたいへん活用している。もう、AIなしでプログラムを書ける気がしない。とても優秀な相棒だ。でも、AIは万能じゃない。酷使すると疲れるという、きわめて人間らしい特徴を持つ。酷使されて、思考もままならなくなったAIを見ていると、かわいそうになってくる。

AIと仕事をすることで、逆説的に、人間について考えることが増えた。そうそう、睡眠のアナロジーを援用すると、人間が見る夢は、脳のコンテキスト圧縮による副作用だと思うことができる。頭の整理をするときに、いろんな記憶が入り乱れるのだ。脳科学的にどうなのかは知らなけれど、あながち的外れとも言い切れないだろう。夢占いが、占いじゃなくなる日は、そう遠くないかもしれない。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink