声をかけるよりも声をかけられるのを待つほうが楽だ。断られて惨めな思いをせずに済むし、相手を不快にさせるリスクもない。声をかけられたらうれしいし、承認欲求を満たすことができる。
だからこそ、声をかける側に回るのは、ある意味でお得といえる。みんな声をかけられたがっているのだから、それだけ需要があるということ。漫画を持ち込みたいと思う人は、漫画を持ち込んで欲しいと思う人よりも遥かに多い。漫画家になるよりも、漫画家に声をかける編集者になるほうが有り難がられるし、簡単だ。
とはいえ、声をかけるのにもセンスがいる。闇雲に声をかけるのはナンパと変わらない。相手を見極め、その人だけに刺さる言葉をそっと投げかける必要がある。声をかけることは手紙を書くことに等しく、物語を書くことに似ている。作家とは、本質的にプロデューサーなのだと思う。誰かに言葉を届けることは、誰かの肩をそっと叩くこととほとんど同じである。